地元代表という存在
※記事を書いた時期と更新時期に強烈なタイムラグがあります。
ネタをストックしようとして出し惜しみし続けた結果がこれです。
許して♡
代表選手。
それは、競輪開催に参加するすべての選手の権利、いや、人権を握っているかもしれない…!
そんな存在なのである…!
いや、そんな事はないです(どないやねん)。
競輪開催では、毎開催「選手代表」というものが設定されます。
大抵、選手会で役職に就いている選手が、地区ごとに選出されます。
斡旋のレベルで役職に就いている選手がいない場合、年功序列で地区別の最年長者が選ばれますよ。
加えて、ガールズ開催の場合は、「ガールズ代表」も選出されます。
参加選手数にもよりますが、毎開催4〜6人程度が選ばれる感じですかね。
上に貼った写真は、今年の8月30日〜9月2日に開催された奈良県営ミッドナイト競輪のメンバー表です(開催終了後、契約解除後に許可を得て撮影)。
7R制のミッドナイトで参加選手が少ないため、当開催では4人の選手代表が選出されています。
あら、若いのに田村風起くんも選ばれていますね。
そうなんです。
実は私、競輪選手会奈良支部にて「支部監査人」という役職に就いているのです。
【競輪界にも選挙がある】
【会計を監査してみた】
年功序列でいえばまだぺーぺーの僕ですが、役職に就いているため代表選手に選ばれる事がちょくちょくある、という感じです。
ちなみに、今回の僕の立場は通称「地元代表」。
地区別の代表に加えて、必ず開催場のある地元支部の選手がひとり代表選手として選出されるのです。
選手代表の仕事は、名前の通り参加選手を代表して選手管理や番組編成等、JKAと選手の間を取り持つ事です。
例えば、レースを走って腰が痛くなったので医務室に行ったんだけど、こりゃ欠場に繋がるレベルでヤバイ…。
という時に、まず相談するのは選手代表。
選手代表に一旦、話を通した上で選手代表同伴で選手管理室に行き、出走がヤバイかもしれん旨を運営側に伝えるのです。
自分で直接行けばいいじゃん!って話なのですが、競輪選手って非常に自分勝手な種族ですから。
各々が好き勝手に選手管理に物申しに行くと、現場がてんやわんやしてしまうので、こういうシステムになっている訳ですね。
この選手代表の仕事に加えて、地元代表は文字通り「地元民としてのご意見番」的な立ち位置になります。
バンクコンディションや、気象、交通等に関する話題の相談役…というと微妙ですが、なんかそんな感じの存在。
例えば、「雨が微妙に降っているんだけど、このくらいの雨の場合、雨敢(雨天敢闘手当)を出す?」という話題が運営側で出た場合、参加選手側の弁護人的立場として地元代表にも相談が回る、と言った感じです。
「奈良は軽い雨でもバンクのグリップが悪くなるので、可能であれば雨敢を出してほしい!」
と、地元の勝手を知ったる人間が言えば、多少の説得力や交渉力が出るってもんです。
とはいえ、地元代表を含め代表選手に選ばれても先述したような「仕事」をする機会って結構マレです。
確実に舞い込んでくる仕事と言えば、前検日に代表懇談会に出席する程度でしょうか。
代表選手と、選手管理、審判、施行者(競輪場の場長さんや自治体の職員さん)が集まって、開催の運営に関する説明(どこに行っても同じような内容)や注意事項を受けて、「今開催、よろしくお願いします」という挨拶をする儀式です。
そんな中、今回、僕が地元代表に選出された奈良ミッドナイト開催では、大仕事が舞い込んできました。
代表懇談会の際、こんな紙を渡されます。
当該開催期間の天気予報です。
競輪参加中は通信機器は使えないので、競輪場運営がプリントアウトしてきてくれますよ。
実にアナログな感じです。
あらら、今開催は雨ですねぇ。
濡れるのやだなぁ…。
いつも渡されるのは週間天気予報と天気図のプリントだけですが、今開催はもう1枚くっついていました。
ぬっ!台風が来ているぞ!
実は、当記事に登場する8月31日を初日とする奈良ミッドナイト開催は、超強力で九州地区で大きな被害を出した台風10号が接近していたのです。
そう、台風等の要因で開催中止や順延の可能性がある場合、選手代表が参加選手の総意として会議に出席し、開催の可否を決める立場となるのです。
もちろん、実際の開催の可否については、我々選手代表の独断ではなく、競輪を開催する地方自治体の職員さん、現場運営のJKAのスタッフの意見を交えて、総合的に判断されますよ。
ただ、そんな中でも、地元代表の声は思いのほか影響力が大きく、代表会議で僕が「決行でいいでしょ」と雑に話を済ませて、えげつない台風が直撃した場合、参加選手は為す術もなく強烈な風雨の中レースを走る羽目になるのです。
逆に、地元代表が「こんな危険なコンディションでレースなんてできるか!」と言ってしまうと、「地元民が言うなんてよっぽどだぞ!」と、順延も検討されてしまう訳です。
その場合、競輪選手は無駄に1日を過ごす事になりますよね。
そういう意味で、冒頭に書いた「参加選手の人権を握っているかもしれない」という文章が回収される訳です。
おわかりいただけたでしょうか(意味不明)。
そう、今開催では田村風起くんが地元代表としてお気持ち表明をする、重大な責任が伴う立場なのです…。
さて、件の台風10号は前検日(8月30日)の代表懇談会時点では九州を通過したあたり。
ノロノロ台風とも言われた、スローペースな進み具合だったため、このままだと翌日(開催初日)に台風が直撃するかもしれない…といった具合です。
ミッドナイト開催という事もあり、前検日時点で結論を出すのは早計だという事で、開催初日の昼に再度代表会議が開かれることになりました。
〜翌日〜
代表会議で配られた天気予報図がこちら。
当日(31日)、図だとちょっと分かりにくいのですが、台風の進路は予想より大幅に南下し、勢力も弱まって熱帯低気圧となる寸前だそうです。
しかも、周囲に山地がある奈良県奈良市は風雨の影響がほとんど出ないかも! 流石は都があった街だぜ! という結論に至り、今回の奈良ミッドナイト開催は初日から無事に3日間開催されたのでした。
めでたしめでたし。
なかなかお客様の目に触れる事がない、選手代表という役割。
あなたの地元競輪場の開催でも、代表選手が暗躍しているかもしれませんね…。
色々と語ったのですが、僕の世代の選手で選手代表を経験したことがある人って、結構少ないと思います。
キモオタク、多趣味、料理クラスタ、選手会役員…等々、圧倒的に多彩なアイデンティティを振りかざしつつ、競輪の裏話的お話を書いていきたいと思っていますので、今後ともよろしくお願いします。
では、また次回!
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1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。