競輪界、なぜ人手不足?
☎「田村選手! 某競輪場の番組編成です。急で申し訳ないのですが、明後日からの開催に欠員が出ておりまして、追加斡旋で来ていただけないかと思いまして…」
ぼく「いくらでも行きますよ! 一応予定確認して、すぐ折り返します」
☎「ありがとうございます! PCR検査の陰性証明が必要ですので、よろしくお願いしますね! では!」
ガチャン、ツーツー…。
PCRの陰性証明かぁ...。あれ? どのようにして用意すれば…?
〜折り返し〜
ぼく「すいません…陰性証明用意できそうにないので、やっぱりお断りさせていただいてよろしいでしょうか…」
こんなアホみたいなやり取り、本当にある怖い話。
お客様〜! 大変申し訳ございません...。
ココ最近、競輪選手が欠品しておりまして、レースを満車で走らせることができかねます...。
つきましては、統括団体の管理者が責任を取って退任の上、対応、対策を協議して参りますのでご理解ください...。
なんてアナウンスがある訳もなく。
最近、レースにおける欠車や、挙句レースカットがほんとに増えていますね。
というか、増えすぎて負け戦の欠車5車立は当然のような感じになっているので、もはやお客様も気にも留めておられないですかね(笑)。
当事者である我々競輪選手としても、お客様にも関係各所にも本当に申し訳ない限りです。
と、上っ面の申し訳なさこそ感じているものの(手のひらクルクル)、ここ最近の欠車事情については、ちょっと我々競輪選手としては言い訳を申し上げたい状況でもあるんです。
よく考えれば、ほんの数年前までは9車立の12Rが余裕で成り立っていたのに、なぜ今はこんなザマなの?
追加補充は結局なんで呼べねーの?
という点、今回の記事で角が立たない程度にちょっと説明しつつ、愚痴ってみようかなと思います。
スナックたむらへようこそ!
とりあえず、固い話になりすぎると嫌なのでビールでも一杯いかがですか?
これ、先日ちょっとだけオシャンな店に行く機会があったのですが、そこで飲んだビールの写真です。
オシャンでしょ?
いや、聞くまでもなくオシャンだわ、心なしかちょっとお上品な味したもん。
あ、あなたのビールは画面の前で自身で用意してくださいね…。
それでは乾杯。
さてぇ〜! 酒も入ったところで(架空)、愚痴を並べますかぁ!
っても先程書いた通りなのですが、最近うちの業界、事前の欠場選手や、当日欠場選手が出た際に選手の補充が追いついていない状況です。
読者の皆さんは競輪をある程度見ておられると思うので、最近の欠車の多さはご存知ですよね?
初日なのに6車立のレースがあったり、2日目以降の負け戦に至っては5車立のレースが普通に行われています。
当日欠場も多々あり、挙句の果てにはレースカットなんて事態も…。
結論から申し上げると、これらはすべて、元をたどれば「新型コロナウイルス感染拡大防止対策」による弊害です。
ほんと、この手の話題はすべてコロナのせいです。
早く何とかならんもんですかねぇ?
といっても、コロナになって欠場する選手が多すぎるせいで選手が足りてない! なんて安直な理由ではないですよ。
以前であれば、欠場に対しては追加斡旋による対応、開催中の欠場でも、補充選手を呼んで対応していましたよね。
例えば9車立の12R制で、縁起でもないですが大量落車による多数の帰郷等があっても、次の日は補充選手が来てほぼ満車に近い状態で走っていたと思います。
選手の数自体はね、その頃と特に変わってないのですよ。
さて、そろそろ2杯目のタイミングですか?
こちらも、こないだのオシャンなお店で飲んだワインです。
ビールからのワイン? って思われてもまあしゃーない。
本来はしっぽり系の店なのに、大衆のテンションでとりあえずビール! を頼んだ拙者が場違いだったでござる。
あ、2杯目もお客様が画面の前でセルフでご用意してくださいね…!
では乾杯。
酒が入ってるので(架空)、愚痴を続けても大丈夫!
実は現状の競輪界って、追加・補充を受ける選手が激減しているんです。
というより、追加・補充を受けられる選手と言った方が正しいですかね。
そう、ここで伏線回収です。
冒頭のアホみたいなやり取りを思い出してください!
アレです。アレがすべての元凶なのです。
現在、競輪界ではレース参加5日前にPCR検査を医療機関に郵送し、陰性の診断を貰い、その証明書(スマホに送られてくる)を持参しなければ、競輪開催の際に競輪場への入場すらできないのです。
こんなん。
これを入場口で提示しないと、入場すらできません。
以前、このPCR検査の概要も含めて詳細なコロナ対策に関する記事を書いたので、まだ見ていない方がおられたらぜひ一度見てみてください。
競輪参加後に陽性者が判明する仕組み
この記事、コロナ関連の記事を書く時には毎回リンクを貼っているので、耳にタコ状態かと思いますが、今回も例に漏れず貼りました(笑)。
まあ、この記事でコロナ禍の競輪界の状況がある程度伝わるので、我ながら便利な記事なのです。
頑張って書いたのでフル活用させてください(笑)。
この記事の内容はある程度ご存知の前提でお話を進めてしまうので、ご了承くださいね。
まずは、追加斡旋のお話。
コロナの記事でも紹介しているPCR検査、もちろん追加斡旋でも同じように検査結果の持ち込みが必要なのです。
まぁ、追加とはいえ同じようにレースに参加するんで当たり前ですけどね。
ただ、ひと言に検査結果を出して持ち込むと言っても
・PCR検査キットの取り寄せるためにスマホで手続き、2〜3日後に医療機関よりキットが郵送で届く
↓
・唾液を採取して検査キットを速達にて郵送、結果が出るまで2〜3日程度待つ(大抵は翌日には検査結果が出ますが名目上)
と、実際に検査を受けるまでにタイムラグがあるんですね。
一度に複数の検査キットの手続きをするため、追加の依頼が来た時にタイミング良く手元にスペアの検査キットがあったりもしますが。
そこまでは良いでしょう、ここからは例えばのお話です。
前検日の2日前に、追加の依頼を貰ったとしましょう。
「いつもなら翌日(前検前日)には検査結果出るし、とりあえず追加受けよっかな!」
と、PCR検査が間に合うとタカをくくって追加を受けたとしましょう。
そして、たまたま! 偶然! 医療機関の検査が混み合っているなりして、前検日に検査結果が届かなかったとします。
そしたらね…?
このパターンの場合、選手責任の欠場扱いになってしまうんですよ。
選手責任の直前欠場は、2回目以降は級班審査の審査点数(競走得点から違反による点数を引いた点)から、さらにマイナス1点というペナルティがあるのです。
微妙に重いペナルティですよね…(笑)。
このペナルティによる点数マイナス、級班のボーダーにいる選手にとってはほんと死活問題です。
もちろん、このパターンの追加で「いけるやろ」とタカをくくる選手に責任があるのは当然ですよ(笑)。
でも、上に書いたようにこれは例え話でして、現実であれば、
「そんなリスクがあるのであれば追加は受けません!」
とハナから断ってしまう訳です。
そんな事情で、追加を受ける(受けられる)選手が激減しているというワケですね。
そして、もうひとつの要素、補充についてです。
これねぇ、現状では新型コロナウイルスのワクチン接種者しか、補充選手として走れない決まりになってるんですよ。
これ、巷で言うワクチンハラスメント…? と思ってしまうお話ですが、大前提としてうちの業界(ってどこの業界もそうでしょうけど)、ワクチン接種推奨の職場です。
で、ワクチン接種を進めるために、ワクチンを接種した者へのインセンティブ(イキった言い回し)として、補充の権利を付与した訳ですね。
また、もうひとつのインセンティブ(イキった言い回し)に、ワクチン接種者には追加斡旋の優先権が与えられるというものがありました。
しかし、先述した内容等も相まって、ワクチン打ってなくても関係なくバシバシ追加が来る状況。
もし、インセンティブ目的でワクチン接種した人がいたとしたら、ちょっと不公平感が否めないですよね。
さて、愚痴も込んできたので最後は日本酒で締めましょうか…。
こちら、試作品の特別なお酒だそうです。
最近オシャレなラベルのお酒が増えましたね!
あ、お客様のお酒はセルフで(省略)。
そして、欠車が増えている更なる要因なのですが…。
まあ、これも健全な運営を続けるため当然と言えば当然なのですが、現状の競輪開催では
発熱や喉の違和感があれば結構簡単に欠場に繋がってしまう
のです。
スポーツを本気でやったことがある方ならわかると思うのですが、スポーツ後は身体が火照ります。
そして、季節にもよりますが、全力で運動をした後って、息が上がって喉もイガイガしますよね。
ま、そのような想定しうる体調不良は現場のスタッフの皆様も理解してくださっているし、レース直後なんてタイミングでわざわざ熱を測ることもありません(笑)。
見て見ぬふりと言うと大変言い回しが悪いですが、流石に現場の皆さんが柔軟に対応してくださってます。
しかし、選手自身が変なタイミングで熱を測ってしまったり、あまりに咳が酷くてクレームが出るなり、何らかのタイミングで「症状を観測してしまった」際の対応は
疑わしきは帰れ
なのです。
症状出てたら検査をして、陽性だったら帰れ! ではないですよ。
症状を観測した時点です。
で、契約解除になってから陽性になっても「競輪場で感染した」かどうかはわかりませんからね。
シュレディンガーの猫状態を創る訳です。
その辺、公営競技の「疑わしきは罰する」のスタイルもあってか、結構厳しいんですよね。
当日欠場が増えているのは選手の自己管理不足もありますが、そういう厳しいご時世のせいでもあるんです。
しかし、この厳しいコロナ対策スタイルのお陰で我々はコロナ禍でも通常通りレースを走れているので、ありがたいことではあります。これ大事。
上記のお話を踏まえて、当たり前ですが、当日欠場した選手は全員が全員コロナになって帰っている訳ではありませんよ! というのもお伝えしておきます(笑)。
多分、お客様から見ると
「お、〇〇くん当欠しとるやん! コロナやな」
と想像する方が多いと思います。
ってか、僕もそう思って見てしまいます(笑)。
しかし、実際のところは
「中にはコロナで帰る人もいるが、意外にその比率は少ない」
という感じです。
そんなこんなで、選手の数自体は足りているのに、様々なコロナ対策が悪いこと作用して、数が足りていないような状況になっている、というのが現実です。
そして、そんな現場の状況を踏まえることなく、お役所の方では
「選手が足りないなら増やせばいい」
という発想が出ているそうです。
なんだかこう、当事者としては残念ですよね。
我が競輪界、巣ごもり需要のお陰で、たまたま売上が上がっている訳ですが、オフィスで机上の空論を述べている方々が「我々の営業努力のおかげで売上が上がった!」と勘違いしてあぐらをかかないことを祈ります…。
解決方法はただひとつ。
もう、コロナを無視すりゃいいじゃん!
ってところなのですが、大人の世界ではそれが通用しないのは、社会人であれば痛いほど知っていますよね(笑)。
コロナと付き合わなければいけない間は現状の欠車が続くと思われます。
見栄えも悪いですし、「競輪」を見たいお客様にはほんと申し訳ない限りです。
しかし、競輪界がコロナ対策をどこの業界よりも頑張っている裏返しでもあるので、皆さんにはご理解いただければ幸いです…。
ということで、今回はなぜ欠車やレースカットが多発しているかについて説明しました!
個人的なことですが、僕は人が足りない時に追加の打診があれば、強行スケジュールでもできるだけ協力するようにしています。
微力ながら、選手になった以上は少しでも業界に貢献しないとダメですからね。
ま、走れば走るだけお金が貰える世界でもありますし(そっちが本心?)。
読者の皆さんも、コロナに振り回されるご時世には嫌気がさしていることでしょうけど、まぁ気長に終息を待ちましょう。
長くなっちゃいましたね。
読んでくださった方、お疲れ様でした。
じゃ、また次回!
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1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。