競輪用自転車の寿命
今回も落車後のお話です!
身体もボロボロ、自転車もボロボロ…。
本当に落車っていい事がない。
前回は身体と財布がボロボロになった話を書いたので、今回は自転車がボロボロになる話を書きます
今回の自転車の破損部位はこんな感じ。
ボロボロだぁ!
この右下の・その他 の項目に書かれているのは、自転車のフレームのパイプの損傷です。
こんな感じ。
この部分は、上パイプ(ロードバイクで言うところのトップチューブ)の裏側です。
結構凹んでますよね。
ちなみに、なぜこんな所が凹むのかというと…。
こんな感じで、ハンドルが当たる位置なんですね。
落車して自転車が吹っ飛ぶと、ここがよく凹みます。
今回は転倒中に右、左とぶつけたみたいで、よくみると左右両方に打痕が入っていますね。
さて、話が急に変わりますが、ここで記事のタイトルを回収しようと思います。
皆さん、競輪用フレームの寿命っていつだと思いますか?
落車してしまった時、今回のように凹みができた時…。
一般の方々や、何だったら趣味で自転車を嗜んでおられる方も、そう思っておられるかもしれません。
でも実は、競輪用クロモリフレームの寿命は「無限」に等しいのです!
無限は言いすぎだろ…と思われたかも知れませんが、案外言い過ぎという訳でもないのです。
実例を挙げますと、街道練習用なんかだと2〜30年もののフレームを使っている選手が結構います。
ベテラン選手なんかだと顕著ですね。
我々はまだ10年しか選手をやっていないので、物理的に古いフレームは持っていませんし(笑)。
ただ、僕も競輪学校の試験に使ったフレームを街道用にして未だに使っていますし、このまま乗り続ければ、僕の自転車もそういう未来を辿るのかなぁと思ったりします。
また、競走用の本番自転車でも、5〜10年ものフレームくらいなら開催現場でよく見かけます。
体感ですが、2〜3割くらいは結構年季が入ったフレームを使っている選手がおられます。
ケチという訳じゃなく、競輪用自転車が手作りのオーダーメイドである以上、驚くほど身体に馴染む当たりフレームって結構レアなんですよ。
同じサイズで新しいフレームを作ってもしっくり来ない、仕方なく古いのに乗るか…。
という人は少なくないのです。
そんな年季が入ったフレームが使えるなんて、落車もせず、運がいいフレームだなぁ…と思いますよね。
実は、競輪用フレームって落車していようが、大きな凹みが入っていようが、割と使い続けられてしまうんですよ。
競輪用フレームの素材であるクロモリ(クロムモリブデン)は、その名の通りクロムとモリブデンという金属を添加した鉄の事だそうです。
強度が高く、他の素材とは比にならないくらい、しなやかな金属なのです。
その金属のしなやかさが多少のダメージを吸収してくれるので、落車してもある程度剛性を損ねずに使い続けられるんです。
また、最悪パイプが折れたり曲がったりして、レースで使用できません! という状態になってしまっても、ラグ(パイプを繋ぐ関節部分)が生きていれば、パイプを溶接し直して1本単位で差し替える事ができるんです。
すごい技術ですよね。
ただでさえ強くしなやかなクロモリフレーム、そういった力業を駆使すると、放置して錆びて朽ちない限りは本当に無限に使えると言っても過言でないのです。
カーボンだと、1度の落車で割れが生じたり、割れなくともハリがなくなったりしてしまいますから。
クロモリよりも圧倒的に高額ですし、サイズの融通も効かない。
これが、いまだに競輪でクロモリフレームが採用されている理由です。
時代錯誤に見えて、キチンと意味があるのですよ。
まあ、物理的寿命がほぼ無限というだけで、サイズの違いや流行の変化、また、先述したパイプ差し替えや経年で乗り味が変化する場合もあり、レース本番で使うフレームに関しては自ら選択して降りる事はあります。
それが、寿命はほぼ無限のクロモリフレームの「賞味期限」的な…? そういう事になるんでしょうかね(意味不明)。
という訳で、冒頭に写真を貼った今回落車したフレームにも、まだまだ頑張ってもらわないといけません。
しかしながら、流石に落車したフレームを何もせずそのまま使うというのは難しいものがあります。
実は、パッと見でフレームのパイプが曲がったりしていなくても、落車時の衝撃でフレーム全体のバランスが歪んでしまっていたりするのです。
という訳で、メーカーに送り付けて「センター出し」という作業をしてもらいます。
その為に、落車してから放置していた自転車をバラしていきましょうか…。
現在こんな感じ。
落車すると、検車員がホイールをちょん切って部品をバラし、損傷部位をチェックしてくださいます。
冒頭の自転車補償のお知らせの紙は、その結果表ってワケですね。
自転車補償に関しては既に記事にしているので、そちらをチェックしてくださいね!
【競輪選手の懐事情〜自転車部品高すぎ〜】
そして、この写真の状態で引き渡されるのです。
これを、フレームのみの状態にしていきますよ。
コッタレス抜きという、クランクを抜く以外には用途がない謎工具を駆使してクランクを抜きます。
あとはハンドルとサドルを抜いて完成!
なんだよ、わざわざ記事の終盤に尺を取るほどの作業じゃねーじゃん!(笑)
バラしたフレームを箱に詰めて、パナソニックさんに送り付けました。
帰ってきたら、また田村くんの手となり足となり、パートナーとしてたくさん走ってもらいますからね!
ってな訳で、無限の寿命を持つ競輪用フレームのお話でした。
当記事の内容を考慮すると、クロモリフレームって趣味で自転車に乗っておられる一般ユーザーの方にとっても、一生物の買い物だと胸を張って言えます。
カーボン全盛の時代ですが、もし長く自転車を楽しみたい!と思っておられる自転車乗りの方がおられたら、味があって質実剛健、一生の相棒になるクロモリフレームという渋いチョイスもオススメしたいものですね。
センター出しから帰ってきたマイフレーム。
まあ、見た目は全く分かりませんね(笑)。
ただ、このフレームはまだまだ賞味期限とは程遠い。
復帰戦もコイツに頑張ってもらいます!
進んでくれよ…!
ってな訳でまた次回!
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1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。