長期欠場する競輪選手の生活
肩が取れました!
どうも皆さん、めちゃくちゃ身体が柔らかいので落車してもあまり怪我をしない事に定評がある田村くんですが、久々に大きめの怪我をしましたよ。
今回の症状はというと…。
じゃじゃ〜ん!
この、右肩関節脱臼骨折というのが、肩が取れました! という部分の症状名です。
これ、ビックリするほど痛かったです。
自分で言うと厨二病っぽいですが、ぼくは割と痛みに強い方でしてね。
以前、鎖骨が折れた時も
「痛いけど動かずに心を無にしたらなんかいけそうだな」
という感じで、割と静かに搬送されました。
復帰後に当該競輪場に行った際、医務室のお姉さんにも「落車しても落ち着いてましたよね、みんな結構痛がるのに」と言われました。
そうでしょ! そうでしょ?
ぼくの厨二心が疼きましたね、ええ。
しかし今回は、バンクで落車して担架で医務室に運ばれ、病院に着いてから整復してもらうまでのおよそ3時間半、ずっと
「痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!」
と叫び続けましたよ。
本当に意識が遠のくレベルです。
いやぁ…本当に逃げ場のない激痛だった…一生味わいたくないです。
心から。
そして、脱臼ついでに外れた肩に周りの骨が持っていかれてバラバラに砕けたので、「脱臼骨折」という名称になっています。
さて、これまでの競輪人生で1ヵ月以上の欠場をほとんどした事がない田村風起くんですが、今回はちょっと長引きそうです。
という訳で、今回は長期欠場する競輪選手がどうやって生活するのか? という部分について語ってみますよ〜!
収入はある?
単刀直入に言います。
ないです。
競輪選手は個人事業主。
基本的には競輪を走ってその賞金で生きています。
落車して長期にわたって競輪を走らないと、シンプルに入ってくるお金が無いのです。
一応、競輪界には共済会というものがあり、休業給付という概念が存在します。
級班によって金額は変動しますが、負傷日から数えた欠場日数×指定の金額が貰えます(復帰直前の何日間は免責で計算外とか色々ルールはありますが、詳細はうろ覚えなので省略しますね)。
しかし、残念ながら休業給付は「復帰してから」復帰までにかかった日数を計算されるのです。
すなわち、落車して現在進行形でお金が必要な時にはなんの支援もなく、復帰してから
「おー無事だったか! ほれ、やるよ」
と休業給付を貰えるという、圧倒的後払いなのです!
じゃあ、無収入でどうやって休業期間やリハビリ期間を凌ぐんだよ!って、基本的に貯金を削るのみです。
競輪選手は現金で賞金を貰う都合上、引き落とされるお金を自らの手でATMに入金する必要があるのです。
これ、文字通り札束が消えていくのでかなりキツイんですよね...。
従って、欠場中は手元のお金が減り続けていく恐怖が半端じゃないです。
文字通り、お金に羽が生えているような感覚です...。
ちなみに、これも領収書提出による後払いではありますが、落車、搬送された先の病院の費用は競輪場が、退院後の復帰までの医療費(保険治療に限る)は先述した共済会が補償してくれるので、入院や手術費用をはじめとする医療費に関しては気にする必要はないのですよ。
いまからでも入れる保険があるんですか?
答:ありません!
そもそも競輪選手は、基本的に生命保険に入れません。
まあ絶対に入れない訳ではないのですが、現役中はほとんどの生命保険商品に加入できない可能性の方が高いです。
理由は簡単。
競輪選手というお仕事自体が「危険職種」に指定されているからです。
公営競技選手はもちろん、格闘家、林業などの高所作業員、潜水士など…。
まあ、明らかに他の仕事より怪我をする、もしくは一発で死亡する可能性が高い職に就いている人間は保険に加入するハードルが異常に上がるのです。
生命保険はかなり厳しいですが、一部医療保険には「入れないわけではない」ので、僕も含めて大多数の競輪選手はいくつかの医療保険に加入しています。
しかし、医療保険であっても加入が厳しい点は同じです。
基本的に大きな保障がついた保険商品には入れませんから、話を聞くとほぼ全員が同じような保険商品に加入していますよ(笑)。
そんな中で重宝するのが「入院一時金」がある保険商品です。
たまーーにですが、入院一時金が付帯している保険に加入できるチャンスがあるんです。
これは非常に助かります!
一時金があれば、多少ではありますがその場しのぎをする資金が入ってきますから。
これは、無収入が確定している競輪選手からすれば天から降り注ぐ聖なる光、乾いた財布に降り注ぐ恵みの雨…てなもんですよ。
そんな、競輪選手が入れる貴重な保険商品も、モラルのない一部の競輪選手がシステムを悪用して多額の保険金をせしめたり…という行為が頻発し、関係のない競輪選手が新規で入れなくなるような事がありました。
ほんと、自分の目先の金のために業界全体の足を引っ張る行為は勘弁して欲しいものです。
まとめ
競輪選手は、欠場するとシンプルに無収入です!
個人事業主ですから、業界から福利厚生的な給与の保障なんて一切ないです。
一時金が貰える保険に加入していれば、ワンチャンお金が入ってくる可能性はありますが…まあそれは任意の話ですし個人の人生への備えの話ですから、欠場時の収入源として括るのはちょっと違いますかね。
本当に切羽詰まった選手のために、選手会ごとに互助会的なシステムがあったりしますが、シンプルに無利子の借金ですからね(笑)。
生活に足りる金額を借りられる訳でもないので、あまり手を出したいものではありません。
競輪の事をよくご存知のお客様で、中途半端に「共済会」の存在を知っている方は「どうせ怪我で休んでも金貰えるんだろ?」と思っている方もいらっしゃると思います。
と言うか実際にTwitter(現:X)やマシュマロ(欠場中暇で開設した質問箱のようなもの)にそういうメッセージが届いていましたし(笑)。
貰えるお金はあるっちゃあるのですが、そこらの保険に入れない競輪選手に向けた、業界内医療保険のようなものです。
あと、大前提として、先述した入院一時金まで貰えたとしても、落車欠場をして金銭的に「得をする」事は絶対に有り得ません!
普通に走り続けている方が何倍も稼げます!
ほんと、落車はひとつもいい事がない。
できる限り怪我は避けて現役生活を送りたいものですが、身体を張ってナンボの公営競技選手。
現代社会で普通に生きていれば降りかかる事がない、大きすぎるリスクがあるからこそお金を稼げるってもんです。
身体が限界を迎える日まで、全力でしがみついてサバイバルな世界を駆け抜けて行きたいと思いますよ。
あ、最後に余談ですが...。
今回の田村くん、結構な大怪我でしたが、搬送先の先生の整復技術がピカイチだった事、帰郷後に全力で回復にブーストをかける努力をしているので、1ヵ月半程度で復帰できる見込みです。
無理に復帰してお客様にご迷惑をかける形は避けたいですが、レースを走ってこそ取り戻せる感覚というものは確実にあります。
負荷をかけた練習はできませんが、現在リハビリを行いつつ、何とか脚を落とさないよう回転練習を行って、早期復帰を目指したいと思いますよ。
では、また次回!
前の記事へ
次の記事へ
1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。