競輪選手のレーサーパンツ
どうも皆さんこんにちは。
競輪選手の装備解説委員会会長の田村です。
当ブログでは何度か競輪選手の装備にまつわる解説記事をUPしてきました。
ヘルメットの事、ヘルメットの種類、ヘルメットの紐の締め方…。
あれっ!?
もしかして当ブログ、ヘルメットの事にしか触れてない!?
過去記事はコチラ
いや、正確には過去にレース時のユニフォームの話とか、シューズカバーの話を書いた記憶があるんだが…多分、DMM競輪様のリニューアル時にアーカイブから消えてるんすよね。
という事で、仕切り直し!というと変ですが、再度競輪選手の装備についてちょくちょく書いていこうかと思います。
では、まずはこちらをご覧ください。
レーパンことレーサーパンツです。
レーサーパンツという衣服は、自転車に乗る前傾姿勢の時にシワができないようになっており、空気抵抗を抑え、かつ股間部分に縫い目が出ないように縫製された自転車専用のパンツです。
ボディラインに沿ったピチピチパンツ、客観的に見ると恥ずかしい感じのパンツですが、最近では趣味でロードレーサーに乗る方も多いので、街中でも見かける機会が多いのではないでしょうか?
その中で、競輪選手のレーサーパンツは、黒地にA級は緑、S級は赤のラインに七つ星の、シンプルかつ「競輪選手」と一発でわかるデザインが採用されています(過去には違うデザインが色々とあったのですが、その話をすると長くなりそうなので各自で調べてみてください)。
また、見た目は同じように見えてロードレースのレーパンと競輪用のレーパンは機能が若干違っていたりします。
今回は、ロードレースで使用されている通常のレーパンと、競輪用レーパンの違い、レーパンについてのよくある疑問に触れつつ、競輪選手が履いているレーサーパンツについて語っていきますよ〜!
さて、冒頭の写真のレーパンは「cramerPRO(クレーマープロ)」という、競輪業界では非常にポピュラーな自転車衣類ブランドのものです。
レーパンに関しては、「クレーマープロ」と「メダリストクラブ」というブランドが人気の2強です。
これがメダリストのレーパン。
こちらも競輪界で超有名な衣類ブランドです。
このロゴ、競輪好きな方なら一度くらいは見た事ありますかね?
形や縫製が少し違うのですが、「競輪用レーパン」としての機能や特徴は大体同じです。
もちろん他ブランドのレーパンも色々ありますが、競輪業界においては前述2社のシェアが圧倒的ですので省かせて頂きますね…。
サイズはS.M.L.XL.XXL等、そこらの衣類と同じ規格です。
丈の長さは複数あり、最近は長めが主流ですかね。
メーカーによって履き心地が微妙に違うので、各々お股の相性と相談しつつ、好みに合わせて購入します。
そして、こちらは一般的な自転車店でも手に入る、ロードレース用のレーサーパンツです。
レーパンって立体構造なので、地べたに置いて撮影するのが難しいです(笑)。
って事で着てみました。
こんな感じ。
競輪用との違いを色々と考察してみてください…。
まず目につくのは、肩紐の有無です。
競輪レーパンは、通常のズボンと同じく腰のゴム止め、紐で締めるスタイルです。
しかし、何時間も前傾姿勢で自転車に乗らないといけないロードレース競技でこのタイプを履くと、まーお腹で結び目が擦れます。
また、万が一にもロードレースの最中に締めている紐が解けたり、ずり落ちてしまうと、いちいちストレスになりますからね。
長時間、自転車に乗るロードレースでは、小さなストレスが消耗に繋がります。
その手の小さなトラブルを防ぐため、肩紐がついているレーパンが主流、という訳です。
競輪選手でも、あえて肩紐付きレーパンを履く人もいますし、一応商品として選択肢は用意されています。
しかし、短時間で終わるトラック競技では肩紐の必要性や優位性が少ないこと、そして何よりトイレの時に肩紐があると不便なため(うんこをするときは特に)、あまりポピュラーではありません。
完全に好みの領域ですね。
競輪用レーパンの特徴をもうひとつ。
競輪用レーパン側面の素材が違う部分は、布が二重になっています。
これは、ロードレース用レーパンにはあまり見られない加工です。
実はこれ、落車した際に布が滑る事で、地面との摩擦を減らし少しでも擦過傷を減らすための加工なんですよ。
ロードレースと違い、落車を前提として設計されているのが面白いですよね。
また、ロードレース用レーパンには、ほぼ100%股間のパッドが付いています。
競輪用は、パッドの有無が選べます。
というのも、少し前までは競輪選手はパッドなしが主流でした。
パッドなしはサドルへのダイレクト感が強く、競輪を走る短時間であれば、股間への負担はそれほど大きくないので、あまり苦ではありません。
しかし、街道練習などで長時間サドルに跨っていると…パッドなしは地獄ッッッ!
それでも、プロたるもの何度も股ずれを繰り返し、少しずつ股の皮を厚くしてこそ!という論が主流でした。
アマチュア時代に、パッドなしでも耐えられるほどの股間の皮の厚さを手に入れるまで一所懸命に乗り込んで、競輪学校に合格。
デビューする頃には何百キロ乗り込んでも股擦れしない、競輪選手としてのアイデンティティが確立されている…!
という、根性論溢れる世界だったのです。
…とはいえ、最近は競輪選手でもパッドありが主流です(手のひらクルクル)。
股間もゆとり世代かよ!とか言わないで!
最近はレーサーパンツをはじめ、自転車用衣類の圧倒的な技術進化により、パッドありでもダイレクトな乗り心地を実現しているのです。
さらに昔のレーパンのパッドは、セーム革(メガネ拭きとかに使われてる革)だったらしいので、パッドの存在なんて気休め程度だったのかもしれません。
また、昔に比べて現代競輪のセッティングはかなり前乗りになっていますから。
サドルに浅く座ると、股間の前方に全体重がかかるので根性論では流石に股間(主に尿道)を守れなくなってきているのです(笑)。
ロードレース用のレーパンと競輪用のレーパン。
同じレーパンでも、競輪選手が履いているレーパンは選択肢が多く、落車に備えた機能もついて微妙にプロ仕様となっている事をお分かりいただけましたか?
さて最後に、このレーパンに関して、非常に下世話な質問をよく受けます。
それは
「このピチピチの服、ノーパンで履いてんの?(笑)」
という質問。
競輪選手をはじめ、趣味でロードレーサーに乗っている方ですら、飽き飽きするほど聞かれる質問でしょう。
まあ、僕ら男子が聞かれる分には「ノーパンやで」と答えるだけで良いのですが…。
SNS等で、ちょくちょく
「女子もノーパンなんですか?ニチャァ」
みたいなセクハラ質問をガールズケイリン選手に飛ばしている方を見かけます。
輪界の宝、ガールズ選手に下世話な質問しやがって…。
お前らは不本意だろうけど、今回、俺が疑問を解決してやるよ。
ガールズ選手の皆様も、そのようなセクハラ質問を受けたらこの記事のURLを貼って凌いでくださいね(笑)。
さてこの質問、結論から言うと、ノーパンで履いてます。
男女問わず、パンツは履かずに地肌に直接レーパンを履きますよ。
だって、当記事で散々言ってきましたが、股ずれを起こさないための縫製になっているんですから。
下にパンツを履いたら、ゴワゴワして股ずれして痛いに決まってんじゃん!
女子選手にキモ=セクハラ質問を飛ばしていたお客様、
「ノーパンであんな薄っぺらい布で走ってんのか!ドゥフフw」
なんて思いましたか?
喜ぶのはまだ早いぞ。
股間部分を覆っているパッドを裏側から見てくださいよ。
こんな感じ。
これ、男子用でも相当分厚いです。
下手しい1cm程度ありますよ。
このレーサーパンツのパッド、男女で結構形が違います。
まあ、骨盤の形が違いますからね。
女子用は更にパッドの面積が広かったり、分厚かったりしますよ。
しかも、前述した通り競輪選手のレーパンは落車した時に被害が軽減されるよう二重に縫製されていたりする都合で、生地が地味に分厚いです。
すなわち、レーパンを履いている女性の股間は、普段着のパンツとジーンズみたいな格好の時より、圧倒的に分厚い布に守られているのです。
ちなみに、女性用レーパンは、競輪用であってもほぼ100%この分厚いパッドが着いています。
どうだ?
残念な気持ちになったか?
もうセクハラ質問飛ばすんじゃねーぞ?
わかったか?
ちなみに…男子選手がパッド付きレーパンを履くと、いわゆるチンポジと戦う羽目になります。
パッドがちんちんと干渉して、前傾姿勢になった際にびみょーーに邪魔だったりします。
ぶっちゃけ、発走機で股間のポジションを探っている選手って結構多いですよね。
そういう事です。←どういう事やねん
昔はパッドなしレーパンが主流だったのは、そういう理由もあったのかもしれませんね…。
という訳で、競輪選手の必需品、レーサーパンツについて語りました。
皆が当然のように履いているレーパンも、実は競輪選手専用に開発されたプロ仕様の品だったのです。
まあ、ぼくもメーカーの回し者ではないので、全てを語れる知識は持ち合わせていません。
もっと深堀りすれば競輪用レーパンには更なるアピールポイントが隠れているかもしれません。
その辺は、いつの日かメーカーの方にお会いしたら聞いてみようと思います…まあ会う機会なんて無いだろうけど(笑)。
また、実はメーカーによっては、一般の方でもネットで競輪用レーパンを購入できたりします。
競輪用レーサーパンツを実際に手に取って研究してみたい方がおられたら、ぜひ検索してみてくださいね〜!
って事で、また次回!
1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。