斡旋にまつわるあれこれ
競輪選手がお客様に言われて困るお言葉ランキングでn年連続ナンバーワン。それは
「今度は○○競輪場にも来てください!」
です。
ギャンブルの駒である以前にプロスポーツ選手という職に就いている者としては、この上ないありがたいお言葉なんですけどね…。
これ、競輪選手に言われてもどうにもできないという点で非常に困るお言葉なんですよね。
今回は、競輪選手がお仕事をいただく「斡旋(あっせん)」について軽く説明しつつ、最近の競輪界のあっせん事情についてのお話を書いていきますよ〜!
これは猫です。
最近、私生活が地味にバタバタしていて、ちょくちょく記事のアクセントに挟んでいた動物写真を撮影できていません。
僕の撮影欲も溢れかえっているので、なにかしらを撮りたい! と思い、親類の家にいる猫を撮ってきました。
ただ、僕はバチバチの猫アレルギー。
今までは必死に接触を避けていたので、SNSにも滅多に登場することはありませんでしたが…。
やっぱり、猫は最高の被写体。
撮り始めると楽しいこと楽しいこと。
しかしながら、案の定、猫アレルギーが爆発。
目を腫らし、鼻をすすりながら、文字通り身を削って撮影した猫、どうぞご査収ください。
それでは、競輪選手がお仕事をもらううまでの流れを簡単に説明しますわよ。
まず、施行者の方々が開催日程を決めます。
いつ、どこで何節やるのか、FⅠ開催なのか、FⅡ開催なのか。昼開催なのか、ナイターなのか、ミッドナイトなのか。
全国の施行者様の代表が集まって、発売間隔の都合や、競合が出る場合の折り合いをつけるのです。
この割り振りが決まらないと、どの級の選手を何人呼ばないといけないかが定まりませんからね。
その会議が終わった後、JKAの斡旋課さんが、全競輪選手に月に最低2本、多くて3本の斡旋を振り分けてくださいます。
そして、我々競輪選手の元には「〇月〇日 〇〇競輪場 あっせん通知」というメールが届くわけです。
メールを受け取ったら、webにて参加、不参加を回答する手続きをして、無事参加予定選手として登録!
という流れです。
超絶簡潔に流れだけを書いたのですが、おわかりいただけますでしょうか。
競輪選手の希望なんて、一切入る余地がないということを…。
そもそも、「あっせん=斡旋」というワード自体には、
交渉や商売などで、間にはいって、両方の者がうまくゆくように取りはからうこと。また、物事を紹介し世話すること。
という意味があります。
そう、あくまで競輪選手がもらうのは施行者からの出場依頼をJKAより紹介される「出場のあっせん」であって、個人事業主である競輪選手は、JKAに「こういうお仕事がありますよ〜」と紹介されているだけなのです。
競輪選手が自発的に「この開催を走ります」と選ぶ権利は無いってことです。
競輪選手としては、非常に受け身なシステムですよね。
従って「〇〇競輪場に来てください!」という有難いお言葉は、あっせんを受ける側の競輪選手ではなく、あっせんしてくださる元に言ってもらわないとどうしようもありません。
SNS等で競輪選手に言っても、ぶっちゃけ叶うことがないのです。
しかしながら、一応「あっせん調整」や「希望あっせん」というシステムがうちの業界には存在します。
簡単に言えば「〇〇競輪場を走りたい!」と、JKA斡旋課に希望を出せる仕組みです。
でもこれ、言ってしまえば選手がワガママを提出する行為です。
全国の選手をパズルのように均等に振り分けてくださる斡旋課の方に、個別で要望を出す訳ですから。
そのため、基本的には何かしらの理由が必要なのです。
まずはあっせん調整についての説明から。
「もしその日にあっせんが入った場合、家事都合で欠場する羽目になるレベルの予定がある日」が4ヶ月以上前に判明している場合、選手会を通して事前に相談が可能というシステムです。
例えば結婚式や、地区プロとか、支部の合宿とか…いつやるかの日程が決まっている大きな用事ですね。
4ヶ月以上前にわかっていないとあっせん調整を提出できない理由は、先程触れたJKA斡旋課があっせんを振り分けはじめるのが大体あっせん発表の4ヶ月前だからです。
このあっせん調整をいれた月は、月二本が確定になってしまうので、尚更安易に使えるシステムではないんですよね〜。
で、もうひとつの希望あっせん。
こちらは例えば
「家族の都合で一時的に九州に居住地が変わるので、近畿地区所属だが可能な限り九州地区と同じ扱いにして欲しい」
だとか
「代謝対象にかかってしまったので、引退までにどうしてもまだ走っていない競輪場を走りたい」
だとか、文字通り調整してもらう程ではない希望を提出するシステムです。
こちらは、あくまで希望なので叶うとは限りません。
希望あっせんですら、ある程度正当な理由があって初めて使うシステムなんですよね。
システム上は「お客様が希望してるから」と、提出することは可能っちゃ可能です。
しかし、そこまでして遠征地の競輪場に行きたいか? と言われると、正直微妙…。
しかも、雑な理由で希望を提出すると、「なんだこいつ?」と思われてJKAの斡旋課に目をつけられる羽目になりかねないですからね…。
JKA斡旋課の方々も、同じ人間です。
「コイツ鬱陶しいな」と思われれば、嫌がらせ…とまでは言いませんが、有利なあっせんをしたくない! という心が働くのは言うまでもありません。
昔、斡旋課に直接電話をかけた選手がいたそうです(選手会や現場のJKAスタッフを通さずに本部に問い合わせる行為は基本的にご法度行為)。
その選手は、斡旋課の方々のヘイトを買った結果、連続で中3日が続くタイトな日程や、東北からの九州などの極端なあっせんが続く日々を送ったそうです…。
これほどに露骨な嫌がらせ(と言っても、月2本のあっせんはいただいているので正当なのですが)を受けるのは極端な例ですが、やはりあっせんを振り分ける権利を持つ斡旋課の方々を敵に回す行為は宜しくない…! というのが、競輪選手のリアルなのです(笑)。
さて、最近の競輪界のあっせんにまつわるお話をもうひとつ。
最近「4地区あっせん」が流行っていますよね。
全国あっせんの開催であっても、関東、南関、中部近畿、中四国の選手があっせんされていれば、東北や九州は呼ばれないというヤツ。
コロナ禍の際に隣接地区あっせんというシステムはあったのですが、なぜまだ当時の名残…というか、記念開催以外で純粋な全国あっせん開催が無いのだろう? という疑問、当ブログにたどり着いてしまうような競輪オタクの皆さんなら気になっていた人もいらっしゃるのでは?(笑)
なぜこんなあっせんが出るかについて、先日記者の方が真相を語ってくださいました。
実は、7車立て開催で純粋な全国あっせんをしてしまうと、どうやってもラインに組み込めない悲しい扱いの選手が出てしまうからなのだそうです。
従来の9車立てだと、2対2対2対3 なんて細切れ戦を連発しても、特に支障はありませんでした。
しかし、7車立てで同じような細切れ戦を組もうとすると、2対2対2対1という形になります。
どう考えても余り物として味方不在のレースに放り込まれる、不遇な選手が出てしまうんだそうですよ。
それを防ぐため、地区数を減らしている、ということだそうです。
7車立て全国あっせんのせいで、なかなか自力に恵まれないマーク屋や追い込み屋がめっちゃ増えた時期がありました。
マーク、追い込み選手って、一度悪い番組に入ってしまうと
着が落ちる→点数が落ちる→選手としての格が落ち、いい自力をつけてもらえなくなる
という悪いスパイラルに陥ってしまうので、当事者としては必死です。
そんな選手が増えてしまったために、業界が何とか対応してくださった結果が現在のあっせんスタイルなのです。
競輪選手の「あっせん」のシステムの色々、ご理解いただけましたかね?
余談ですが、競輪選手同士で揉め事が起こったり、どうしてもコイツと同じ開催にはしないでほしい! という事態になった場合に行使できる「斡旋忌避」というシステムもあります。
これについては、あまりにも生々しい話しか出てこないので、DMM様のブログで書くのはやめておきますね(笑)。
お客様にあっせんの仕組みを少しでも知って頂いて、毎月あっせんに一喜一憂している競輪選手の心を少しでも身近に感じていただければ幸いですよ。
あーあ、近隣あっせんばっかり来ねーかなぁ!
あ、目標がいる開催なら全然遠征にも行きますよ!
JKA斡旋課様、よろしくお願いいたします!
さて、お約束の私利私欲を述べたところで今回はここまで!
では、また次回!
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1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。