コメントの匙加減
記者さん「田村くん明日の番組出たよ〜!」
ぼく「うーん、こりゃ先行するハメになるかもですね…(ほぼ独り言)。まぁいつも通り自力自在でお願いします」
翌日予想紙「田村風起:自力自在 先行も辞さない」
ぼく「ええ…」
自力! マーク! なにかやる! 切れ目!
勝負の駆け引きはコメント出しの段階で始まっているのである。
基本的に記者様を通して皆さんに届く、競輪選手のコメント。
競輪選手の一日は、レースを走って、自転車を整備して、コメントを出してやっと仕事終わり! って感じです。
選手コメントは、皆さんにとっては予想の重要ファクターでもありますよね。
今日はそんな競輪選手のコメントについて深堀りしてみますよ〜。
今回の箸休め写真はお舟です。
先日ボートレースびわこに行ってきましたよ。
「回り足は悪くない」というコメントを出していた選手が、全然回れてなかったのを見てブチ切れましたけどね。
ホント、コメント詐欺は勘弁して欲しいですよぉ〜!
ってな話は、競輪のお客様も感じておられるでしょうねぇ。
と、コメント出してる側として思うこともしばしば。
というのも、公営競技のコメントというのは、予想する上でかなり重要な役割を担うくせに意外とアバウトなところが多いです。
無論、適当にやっているとかではなく、我々の発言はいろんな人間を通さないとお客様の元に届かないというジレンマが絡んでいるのです。
まず大前提として...選手の調子等のコメントは、選手の主観でしかない! ってとこですね。
お客様的に腹立たしいパターンって、選手が「調子はいい」って言っておきながらレースでは全然走らなかった...的なのが多いと思うんです。
あれ、練習って誰しもがいい感じで走れるんです。
だって練習だもん。いい感じにスピードを出せるように踏むんだから、そりゃあいい感じだわな。
そして、そんないい感じの練習を経て参加する前検日。
記者様に「調子どう?」と聞かれると「いい感じ!」とコメントを出すのは当然ですね(笑)。
実際、レースはマジで別問題。
緊張感も、実践の駆け引きや展開のブレに対応できるかどうかも、練習で養えるものではないです。
また、そんなヤツ滅多にいませんが、コメント取りの際に「調子悪いっす!」とプロ意識を欠いたことを言っても、だいたいは記者様が書かないか、オブラートに包んでくれるものなのです。
お客様の立場だと「ありのままを書けよ」ってなるのはわかるのですが…。
記者の皆様もプロですからね。角が立つようなやり方はあまり好まれないんだと思います。
続いて、そんな記者様とのやり取りの部分なのですが...。
我々競輪選手、開催中に発言した内容は、絶対に記者様を通さないと外に出回ることはありません。
八百長等が疑われないよう、選手はインターネットや外部通信から遮断された缶詰状態ですから。自分では発信できないのは当然ですね。
競輪の現場取材って、極少数の現場記者で回しておられます。
普通のFⅠやFⅡ開催、いわゆるヒラ開催だとだいたい、各新聞、予想紙から一人ずつ、現場実働部隊は4〜5人の記者様がおられる程度なんですよ。
そんな少数の記者様が、協力しながら100人弱参加している競輪選手全員のコメントを取っておられるのです。
レース後の検車場って、ただでさえ相当にてんやわんやですし、全員から一言貰わないといけないってのは記者様にとっては本当に骨の折れる作業だと思いますよ。
ただそんな状態で、選手ひとりひとりの発言を詳細に一言一句拾っていただける訳もなく...。
たまに言葉のニュアンスが伝わらなかった時には、予想紙に
「俺そんなこと言ってねーよ!」
ってコメントが載ってることもなきにしもあらずなのです。
選手もできるだけ簡潔に済ませるつもりですが、わざわざ記者様の方からひと言を求められた挙句にちょっと間違えたことを発信されちゃうと...まあ気持ちのいいものではないですよね(笑)。
当の本人がいざ予想紙をみて「あれ、こんなこと言ったっけ?」って思っても、我々が訂正して発信できるもんじゃありませんから...。
ほんと、開催中に発信される僕たちの言動は、記者様の筆の加減にすべてを握られているのです。
また、ちょっと余談...というか余計なお世話ですが...。
少数ですが、コメントを無駄に脚色したり、演出したがる記者様ってのもおられるんですよ。
物書きとして、目立つ記事を書いて数字を取らないといけないってのはよーーくわかるのですが、走る立場としてはちょっとプレッシャーですよね(笑)。
それで変なレースをして、叩かれたり評判を落とすのは選手ですから。
辛いものがありますよね〜。
まぁ、競輪というコンテンツの盛り上がりに関わる部分なので、脚色してでもメディアの皆さんが演出してくださるのって素晴らしいことなんですよ!
また、今では禁止になりましたが、記者様が個人アカウントで検車場の動画を回したり、選手のプライベートを晒す…なんて構図の記事が出回っていた時期がありましてねぇ。アレは「正直どうなん?」と思う部分は大きかったです。
まぁ実際禁止になってますから、思うところがある人は多かったんだと思いますが。
プロとして数字を取らないといけないのはよくわかりますが、選手のプライベートやゴシップ的な裏話をネタにされたら、された側は気分よくないですよね。
職場の仲間である記者様と、いち個人として世間話をしているつもりでプライベートのことを喋ってたのに、その会話までもが記事にされちゃうと…。
それで嫌な思いをするくらいなら
「記者様とはあんまり喋らないでおこう」
と距離を置く選手が出てきてしまっては、業界全体の悪循環に繋がりますから。
そんなこんながあって、今はそういうトラブル回避のため「記者様向けルール」が設定、周知されています。
ご丁寧にポスターまでありますよ。全国の検車場に貼ってあります。
(※非開催時、管理区域外で撮影)
ま、ぶっちゃけ記者様向けルールができたとて実働の部分で大きく変わる...というわけではないんですけどね。
さらに余談を重ねますが(もうええて)。
「競り」とコメントを出して競らない等のコメント詐欺、アレは選手から見てもマジでどうかと思います。
あんまり車券的な期待に応えられないタイプの僕が偉そうに言うのは本当に恐縮ですが、世間にそういうコメントが出ちゃった以上は、それを遂行する素振りくらい見せたら? とは思っちゃいますよ。
千切れる千切れないとかとは別のベクトルの、精神的な問題ですよね...。
競輪って気合を売る商売ですから。
そういうのを見て残念な気持ちになるのは選手も同じです。
ちなみに、あーいうコメントを遂行しないパターン、行政的(JKA的)処分こそないものの、選手間の評判はガタ落ちしますよ。
お客様にどう見られているか? は、選手にどう見られるか? にも直結しているんですね。
とは言え、ぼくが買う側の立場だったら机をバァンしちゃうと思います。
ちなみにぼくは競艇の回り足のコメントの件で机をバァンしました。
オートレースも試走タイムがいいのに本番走らないやつも何なんだよ! アレはよォ! (話が変わってきた)
びわこに行った時走っておられた、ボート界で一番回れるかもしれない方。
やっぱファンがめちゃ多かったですよ。
どこの業界でも、スター選手はホントすごいです。
ちなみに、この人は下馬評通りすげえ回れてたけど、俺は欲張って軸から外した。
そういうとこだぞ。
そんなこんなで(謎)。
展開次第では先行も含めて何でもするぼくは、ライン先頭の時はほぼ毎回「自力自在で」と簡潔にコメントを出しています。
ま、器用貧乏になって、着に結びついていない感じは否めないですけどね!
まあひと言で言えば、何もしないレースは絶対にしたくないです! という心構えを込めた「自力自在」です。
ニュアンスとしては「なんでもやる」ですけどね。
それだと僕に着いてくれるであろうマーク選手からの印象も変わってきますし、その辺の兼ね合いって微妙に難しいんですよ(笑)。
よければ、改めてそういう競輪選手のコメントと走りのギャップの部分にも注目して、競輪を観戦してみてくださいね。
ちなみに、DMM競輪様なら、万が一コメント詐欺した選手(言い方)がいた場合に、その選手ページにメモを残せる機能があるそうです。
コメント詐欺に限らずとも、気になった点や、最終日に張り切って急にカマシや捲りを出すタイプのマーク屋に注を付けられるのはいい機能ですね!
次回その選手が走るときの車券戦略に繋がるかも。
しかも、DMM競輪の出走表ページは、本家keirin.jpと違ってレースが終わった後もラインの並びのデータが残るそうですよ!
こりゃあDMM競輪で買うしかない!
さぁみんな、今日からDMM競輪でBETだ!(露骨な宣伝)
僕はもちろん競輪買えないから使えないのですが、DMM様は結構、予想玄人の方が駆使しやすいサービスになってると思います。
この記事を見ている方でまだサービスに触れていない方は、ぜひ登録だけでもして行ってください(笑)。
ってことで、今回はコメントに関する紆余曲折…というか一方的な選手目線のお話を書いてみました。
もちろん記者様に物申す! みたいな意味合いで書いた訳ではないですよ。
いつもホント大変なお仕事を担っていただいてありがとうございます。
お互い色々大変でしょうけど、食っていくために頑張りましょうね(建前)。
たまには書かれる側になるのもいいだろ? 気分はどうだ?(本音)
なんて…大真面目な話、度合いは違えど僕もいち物書きとして、記者の皆様はすごくリスペクトしていますよ。
誤解しないでくださいね?
ほな、また次回〜!
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1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。