一般人がバンクを走れる日がある|DMM競輪

一般人がバンクを走れる日がある

皆さんは競輪を見ていて

「俺ならもっと上手く走れるのになぁ」

と思ったことはありますか?


そりゃ人間、絶対ありますよねぇ。
僕はね、正直なところ競艇や競馬を見ていて、何度も思ったことがあります。

「なんで仕掛けねーんだよ!」
「なんでそこでツケマイやねん!」
「あーあ! ボケ! 俺が乗った方が勝てるわ!」

って一人でブツブツ言いながら賭けてますよ。


それを言うと、走ってる側はひと言

「じゃあ走ってみろや!」

とでも言いたくなるもんです。
すると更にお客さんは

「どうやって走れってんだよ!」

となり、水掛け論になる訳ですね。

しかしながら、そうやってお客さんと選手の意見が一生相容れないことを心の奥で理解しているからこそ、ヤキモキしながら自分のことのように応援できる、というのがスポーツの奥の深いところですね。

これが「需要と供給」なのかもしれませんね。しらんけど。


さて、まさかの即落ち2コマを披露するのですが、実はうちの業界には、そんな需要と供給をぶち壊すイベントがあるんです。

それは





バンク走行体験会、通称「愛好会」です。

そう「俺が走った方が上手くやれるわ!」を体験できる場があるんですよ〜!


愛好会、本当の名前はうちであれば「奈良サイクルクラブ」だったり、地区によっていろいろなのですが、「愛好会」が全国競輪場共通の通称っぽいので当記事ではそれで統一しますね。

各県や競輪場、選手会が運営しており、一般人が競輪場を走行する機会が月に1回程度用意されています。

そういえば、競輪漫画の『odds-オッズ-』の最序盤にも「愛好会」が登場しますね。

元々は、競輪選手を目指したい! という人にバンク走行の体験やタイム計測ができる場を設ける目的で行われていた(というか昔は愛好会といえばアマチュア養成の有志のことだった)、そんなイベントです。


今でも、自転車未経験の競輪学校受験希望者が現れると

「一度愛好会の日に来てね」

という流れになるので、アマチュアの方への門という要素は維持しているのですが、基本的には先程も書いた通り「一般人が走っていい日」というゆるい空気感で運営しています。

先日、久々に愛好会のスタッフとしてのお仕事があったので、今回はその様子をお届けしますよ〜!





写真を見ての通り、競輪場でかなり自由に自転車を走らせることができる走行体験会です。

大人数で走る以上、安全に関する最低限のマナーだけは守っていただければ、ほんと自由。

時間内であれば、人と周回しても、もがいてもOKです。


我々競輪選手の仕事は、監視員であり雑用。
市民プールにいるライフセーバーのような立ち位置です。

指導員なんて言い方をしてもいいんでしょうかね?
バンク走行未経験の方がいたら、一緒に並走して走り方やマナーを手取り足取り教えたりもします。





一応、開始の際には前に出て挨拶をさせて貰える立場です。

てかこの日、すごい晴天!





普段は我々競輪選手を監視するために存在する審判塔。





今日は我々が監視する立場!
なので登ってもOK!

張り切って登ったけど、クソ暑いのですぐ降りました。
違反行為を監視する訳ではないので、地べたでも十分良く見えます。





写真では伝わりにくいんですが、このハシゴ、ビックリするほど急。

普通のハシゴとなにが違うんだろ…非常に登りにくいし降りにくい。

って審判塔解説みたいになってますね。



話を愛好会の方に戻すのですが、競技用自転車の貸出なんてものもあります。

大人用と、子供用(サイズ的に小学校高学年程度対応)もありますよ〜。

貸出自転車の数は少ないですが、9割9分の方がマイ自転車持ち込みの方なので、基本的には時間内はずっと独占できる状態です。

例えば、この記事を見て「親子で一度走ってみたいな〜」と思ったぐらいの心構えでも、気軽に手ぶらで参加が可能ですよ。

もちろん「俺の方が上手く走れる!」と思ったお客様もね!(すぐ煽る)


自転車を持っている方は、最低限整備が行き届いていることが絶対条件ですがママチャリでもOKです。

2輪なら何でもござれ。

すげーお高い自転車を持ち込む人から、競輪用ピスト、ロードバイク、クロスバイク、ミニベロ…等々、どんな自転車でもOKですよ。

ただ、重ねて書きますが最低限の整備だけはお願いしています。
自分と他人の命に関わることですからね。


今回は





クロスバイク





ブレてますが、ランドナーの方もおられました。


競輪場って、自転車が最も速く走れるように作られているんです。

使用されているアスファルト自体が、タイヤのグリップを最大限に高めつつ、かつ抵抗が少ない設計になっているため、レースで使用する内外線に入らなくても非常にスピード感が感じられるんです。

傾斜があってこわい! とか、人と走るのはこわい! って理由で内バンクだけ走って帰る方もおられますが、意外に皆さん「すごいスピードが出た!」と満足してくださいます。

ママチャリでも、結構速く感じますよ。





自由走行を終えたあとは、いったん時間を区切ってタイムトライアルを行います。
 
200mのハロン、500mTT、1000mTT、自由に選べますよ。

なんと、競輪選手がタイムを取ってくれる特典付き! いらんけど。


どの種目も、超絶孤独な戦い。

日頃勝負の世界に身を置いている我々が見ると「暑い中よーやるで」ってなもんですが、確かに一般の方が思いっきりスポーツをやる機会って貴重ですものね。
しかも競技場ってなるとなかなか開放の機会もありませんし。

個人タイムトライアル、いわゆる「独走」ってホントにキツいしやりたくないものなんですけどね(笑)。
参加者の皆さん曰く「日頃は絶対に感じることができない、自分に打ち勝つ喜びを感じられる場所…!」なんだとか。

へぇ〜…。





タイム計測の後は、競輪の模擬競走もあります。

ちゃんと車番のヘルメットカバーを着けて、競輪選手が先頭誘導員を務めます。

(写真見てお気付きですかね、用意されてるのはなぜか旧規格のヘルメットカバーです。こんなところでお目にかかるとは…!)


今回は僕が先頭誘導員だったので、ゴール前2人しか撮影できていませんが、しっかり7車立ての本格仕様ですよ!

安全のため横の動きは禁止ですが、勝ち負けは関係なく皆さんいつもとても楽しそうです。

その後、再度自由走行の時間を設けて終了という感じです。



さて、当記事を見て愛好会に興味を持ってくださった方も多少おられるんじゃないですか?

気になる参加費ですが…

なんと無料です。

無料なんです。


そりゃ、地方自治体の所有する競技場ですからね。

競輪場の走路はデリケートなため日頃はプロにしか開放されていないだけで、一応は市民運動場みたいな扱いですし。
金取る要素がないですわな。

(※更新前に思い出して追記)
対人、対物トラブル回避のため数百円の一日保険に加入していただくシステムなようです。実質それが参加費かな?


冒頭の「俺が走った方がマシやわ!」という感情を抱いているお客様もそうでないお客様も、よければ一度、バンクを走ってみてください。

プロの凄さを感じてくれ! なんて偉そうなことは言いませんが、先行の苦しさ、捲りの難しさ、外並走はどれだけ脚が削られるか…等々、実際に体験すると予想の参考にもなると思います。

僕たちも、単純に「競輪場ってこんなに気持ちよく走れるんだ!」という点も知っていただきたい気持ちもありますし。


愛好会のシステム自体は全国競輪場にあるのですが、頻繁に運営しているかどうかは地区次第です。

少なくとも、近畿地区では月に一度程度開催されているので、行きたいな〜って思った人は下記URLで日程を確認してみてくださいね。

https://www.keirin-autorace.or.jp/kyogi/event_kinki.html





鳥も観戦に来てました。


ちなみに、愛好会帰りに競輪買って帰る方も多いです(笑)。

さっきも書いたけど、手ぶらで参加可能なので気楽に検討してみてね〜。
その他細かい疑問があれば、競輪場に問い合わせてみてね!


じゃ、また次回〜





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1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。

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