誘導で緊張する要素|DMM競輪

誘導で緊張する要素



どうも、元誘導王こと田村風起です。
 
 
年間およそ30走弱、鬼のように誘導を走った時期もあったのですが、最近では制度が変わり、誘導王の座を退いた次第です。
 
お客様にアルバイトと揶揄されることもある、先頭誘導員。

誘導なんか引いてる暇があったら練習しろ!なんてお声も聞こえてきますねぇ。
 
実際、ミッドナイト開催で早上がりのレースを引いた場合、時給が1万円にもなる、素晴らしい小金稼ぎおっと 素晴らしいお仕事です。
 
 
 



  
さて、こんな感じで颯爽と風を切るだけでお金が貰える先頭誘導員ですが、皆さんの感覚としては正直、競輪選手が小金を稼ぐための利権的なお仕事だと思っていませんか?
 
 
実は、先頭誘導員って地味に難しく、シビアで、誰にでもできるのか?と言われると首を横に振りたくなるような仕事なのです。
 
 
映像を見る分には、サッとサイクリングをして終わるだけの先頭誘導員。
 
当事者として「簡単じゃないんだぞ!」とアピールしたくなるポイントを、いくつか紹介しますよ!
 
 
それではまずひとつめ。
 
 
 
 
計器がないのにタイムを刻まないといけない
 
 
 

まずはコレですね。
 
競輪競走において、先頭誘導員には指定タイムが課されます。
 
一周目は38秒、二周目は34秒…とかそんな感じ。
 
A級レース、S級レースで微妙に指定タイムが違いますよ。
 
ま、日頃全力でもがいている身からすると、スピード自体は大したものではありません。
 
しかしながら、誘導ってなんかめちゃくちゃ疲労するのです…。
 
 
通常、趣味で自転車に乗っている方はサイクルメーター(サイクルコンピュータともいう)等の計器を装着して、自分が走っているスピードや走行時間を把握しますよね。
 
 
しかし、誘導を引く際は、競輪を走るのと同じ、素の状態の自転車で参加しないといけません。
 
すなわち、計器やセンサー類は取り付け禁止です。
 
外付け装備は、万が一落下した場合、事故に繋がりますからね。
 
開催時の指定練習等でも取り付け禁止です。
 
 
そんな状態でどうやってタイム通りに走るんだ?と言うと、それはもちろん感覚です。
 
競輪選手が時間をかけて培った感覚で、指定されたタイムを完璧に刻むのです。
 
 
これは、ボートレースのフライングスタートを大時計ナシでやるようなものです。
 
地味に高難度ですよね(笑)。
 
しかも、ボートのようなショートダッシュではなく、一周回先(400バンクなら400m先)のタイムを読むのです。
 
風やバンクの重さも日によって違いますから、意外と考える事が多いです。
 
感覚と実際の速度の相違が時速数キロ程度の小さなものでも、400m先では数秒単位で狂いが出ますからね。
 
 
指定されたタイムよりも、プラスマイナス2秒を超えて狂ってしまうと審判より注意が入ります。
 
注意が重なったり、更に大きなタイムミスを犯してしまうと誘導員資格の取り消しもありうるので、意外とシビアですよね。
 
 
そんな感覚を研ぎ澄ましている状態が続くことが、疲れる要素のひとつでしょうねぇ。
 
 
一応、先頭誘導員は無線子機をヘルメットに装着しています。
 
無線で審判から通過タイム等の通信があるのですが、「今時速何キロです」なんて教えてくれるわけがありません。
 
教えてもらえるのはあくまで「結果」です。
 
 
ホーム線を通過した後に
 
「33秒、マイナス3です」
 
と通信がきたら、もう後の祭り。
 
自分の感覚のミスを突きつけられ、「あー終わったら怒られる!」と悔いるのみですよ(笑)。
 
 
 
 
続いてふたつめ!
 
 
 
 
責任が重い
 
 
 

責任のない仕事なんて存在しねーよ! 甘ったれんな!
 
ヒェッ、ごめんなさい…。
 
 
そりゃあ、選手としてレースを走る時も、お客様に命の次に大切なお金を賭けられているという責任を感じつつ走っています。
 
ミスをして負けてしまう事もありますが、勝てば払戻金でお返しができる、素晴らしい仕事です。
 
 
しかし、先頭誘導員の場合はちょっと違います。
 
 
先頭誘導員って、どちらかと言うと「運営側」のお仕事です。
 
万が一、誘導中にミスや車体故障を起こしてしまった場合、競輪場設備の故障や、打鐘、周回板の間違いと同じく、即刻競走中止!という事態に直結しているのです。
 
※ルール上は誘導員がトラブルを起こして居なくなっても競走が続行されるのですが、実際に続行されているのはほとんど見た事がありません
 
 
そう、自分の小さなミスが、莫大な売上金をパァにした挙句、公営競技「競輪」の信用失墜にまで直結しているのです。
 
これって結構怖いことですよ。
 
 
 
これ、元も子もない話をしてしまうと、競輪選手なんて雇わず、自転車競技のように誘導専用の電動自転車等を導入して、JKA職員が誘導引けばいいんじゃね?
 
とか思ったりもします。
 
 
では、なぜ競輪選手が誘導員をする必要があるのか?という点。
 
この部分を深掘りする人自体をあまり見かけないので、あくまで僕の個人的な説ですが…。
 
 
 
多分、責任を分散させる事でリスクを減らしているんだと思います。
 
 
 
もし、先述のようにJKA職員が誘導員をして、大きなミスを犯した場合、「公営ギャンブルの胴元的立場のJKA」がお客様からも、競輪選手からも、施行者からも責任を追及される訳です。
 
 
しかし、個人事業主の競輪選手が誘導員をしている以上、JKAと施行者は「雇った競輪選手を追及する側」でいられますからね。
 
競輪選手がミスをした場合は誘導免許を剥奪すればOKですが、職員がミスをしたら最悪責任を取らせてクビ…なんて事態に飛躍しますから。
 
 
 
競輪運営をJKA、施行者、競輪選手で責任を分散させる事で、「競輪に対する信用」へのリスクが分散されるって訳ですね。
 
公営ギャンブルの胴元という立場って、かなりシビアなものだと思います。

何だかんだと70年も続いている競輪なので、その辺のリスクのコントロールは上手いことバランスが取れているんでしょうねぇ〜。
 
 
 
おっと、オタクが謎の持論を語ってしまった…。
 
 
 



 
あーあ、ドヤ顔の誘導員になっちまったよ。
 
 
まあ、黎明期の競輪競走って、先頭誘導員がいない「普通競走」というものがありましたから。
 
 
先頭固定競走が成り立ち、ポピュラーなルールになる過程で
 
「競輪競走の走路に競輪選手以外が立ち入るなんて論外!」
 
みたいな、感情論的理由もあったのかもしれません。
 
 
ただ、この手の歴史、選手会事務所の競輪史料や、公営競技の歴史に触れた本などを読み漁っているのですが、先頭固定競走の成り立ちにまつわる記述なんて見つかるはずもなく(笑)。
 
 
当記事で書いたのは、すべてぼくの個人的意見です。
 
拙者は書いた内容に責任は持ちません!
 
それでは失敬!ドヒューン
 
 
 
って事で、久々に先頭誘導員について語ってみました。
 
正直、誘導員の話についてはネタがありすぎて、いくら書いても足りません(笑)。
 
誘導中ミスを犯しそうになった場面、誘導員の一日、ぶっちゃけ参加選手と接触はあるのか…などなど、皆様も気になる話題がまだまだ眠っているかもしれません。
 
 
当ブログ開設初期に、誘導員に関するQ&Aの記事を書いたのですが、正直書き足りなかった部分が多いことや、画像が消えてしまっているので改めて更新したい点、筆者側事情で申し訳ないですが、当ブログの担当が代わり心機一転!という感じな事も相まって、手応えがよければまた色々と誘導ネタも書きたいと思っています。
 
是非是非、感想や聞きたいことがあればX(旧Twitter)に投げてください!
 
お待ちしております〜!
 
  
では、また次回!

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1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。

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