ウォーミングアップのおはなし|DMM競輪

ウォーミングアップのおはなし



競輪場、選手控え室にて……。
 
 
 
「クッキーを用意したわ♡」
 
 
「コーヒー淹れるわね〜ン」
 
 
「今日はお茶会ね♡」
 
 
「あらやだ、もうこんな時間! レースが始まっちゃうわン」
 
 
「あらまァ、がんばってね♡」
 
 
「は〜い♡ いってきま〜す♡」
 
 
 
〜レース出走〜
 
 
 
「ただいま♡ お茶会のつづきをはじめるわよ!」
 
 
「いただきま〜〜す♡」
 
 
 
前回に引き続き、突如として始まるお茶会。
 
これこそが、金網の中で死闘を繰り広げる競輪選手の“漢”の世界だ。
 
なんて言いたいんですけど、流石にかなり話を盛っています。

当たり前ですよね。
 

 
そうです、ウォーミングアップも無しに、控え室から飛び出していきなりレースに挑むなんて有り得ないのです!
 
あれっ?もしかしてお茶会のくだりはホントに存在するのか…?
 
真実は神のみぞ知る…!
 

 
って事で(意味不明)、今回はウォーミングアップのお話です。
 
巷では トップ選手は3分間のレースで1億円を稼ぐ! なんてキャッチコピーが用いられている競輪選手。
 
まあ、この表現が流石に盛りすぎなのは皆さんもご存知の通りですよね。
 
3分間のレースを走るまでに、どれだけ備えなきゃダメなんだよって話です。
 
今回は、その“備え”の中でもレース直前の部分、ウォーミングアップを、競輪のレースに出走するまでの流れと共に語っていきますよ。
 
 





筆者近況です(大嘘)。
 
もりんさんお疲れ様です。
 
寒い中、生足を出していると冷えますよねぇ。

んっ、これは生足ではない…? おっと誰か来たようだ。
 
 

スポーツを経験したことがある人は分かると思うのですが、身体が冷えた状態では試合本番には到底挑めません。

ある程度、身体を動かしたりして身体を温めてからでないと、パフォーマンスは落ちるわ、ケガの元になるわ…などと、損しかないのです。
 
ってな訳で、プロアマ問わず強度のある運動をする前には「ウォーミングアップ」を行う訳ですね。
 
 
 
この「ウォーミングアップ」、ストレッチであったり、競輪であれば三本ローラーだったり…やり方や時間は人それぞれです。
 
競輪選手だと、短い人でも数十分、長い人は何時間もウォーミングアップに時間を費やします。
 
まあ、変わったウォーミングアップをしている人は沢山おられるのですが、あまりにも多種多様すぎるので、今回はぼくのやり方を例にしますね。
 
お前みたいな雑魚選手のウォーミングアップ事情なんて需要ねーよ!って言わないで…。

ぼくのアップはだいたい平均的な長さですし、特に変わった事をしないので、競輪選手の平均的ウォーミングアップだと思って見てください。
 
 
 
まず、動きはじめはレース出走時間の約3時間前です。
 
 

3時間もウォーミングアップすんのか!?って言われるとそうではなく、実働時間は2時間程度です。
 
ま、2時間でも他のスポーツを嗜んでいる方々からすると結構長い方か…。
 
 

というのも、皆様ご存知の通り競輪競走では出走時間のおよそ30分前に脚見せが行われるのですが、当の選手は脚見せ待機の10分前=ひとつ前のレースの発走10分前あたりに敢闘門付近の直前控え室への呼び出しを受けます。

我々は競技者である以前にギャンブルの駒ですから、出走直前には改めて点呼や点検を受ける必要があります。
 
すなわち、レース前の3〜40分は確実に“座っているだけ”の空白の時間が発生するのです。

ウロウロしたりトイレに行く程度の事はできますが、その程度。
 
更に、呼び出し前には着替えやレース道具の直前準備をする必要があるので、呼び出し時間の2〜30分前にはウォーミングアップを終えておく必要があるんです。
 
レース直前におよそ1時間程度の空白の時間。

この時間に、せっかくあたためた身体が冷えてしまうと本末転倒ですから、必然的に他業種よりもウォーミングアップ時間が長めになってくる訳です。
 
 

僕の場合、ストレッチと地面でのアップを1時間弱、ローラーに1時間弱乗るので、上記の時刻から逆算して出走の約3時間前に動き出す…という訳ですね。
 

 
そう、実はレースが12時に発走する場合、競輪選手は9時くらいから動き出しているのです!
 
3分間のレースのために、難儀な話ですねぇ〜。
 
気になるウォーミングアップの内容ですが、まずは様々な健康グッズを駆使したストレッチ、マッサージです。
 
 


 
 
なんだか謎の機材が出てきましたねえ…。
 
競輪界は、謎の健康グッズの宝庫です。
 


「それどこに売ってんだ?」



という謎の健康グッズを、スポーツ用品店はもちろん、雑貨屋やホームセンターなどでいち早く発見してきます。

すごい人だと、手作りのグッズを使ってストレッチ、マッサージをしている選手もいますよ。
 

 
ちなみに、世間で流行る健康グッズは、競輪界では何年も先取りで流通していたりします(笑)。

例えば、コロナ禍あたりに流行りはじめて最近では家電量販店や雑貨屋さん等にも置いてあるマッサージガンなんかは、競輪界では6〜7年前から皆が持っていました。
 
 


 
 
こちらは最近どこでも売ってるマッサージガン。
 
古い話で言えば、ストレッチポールなんかもかなり早い段階で流通していたそうです。
 
腐ってもプロスポーツ選手ですから、その辺は皆やっぱ「よく知っている」って感じですね。
 


こちらはほとんど競輪界でしか見かけないグッズ、「一本下駄」。
 
 


 
 
天狗が履いているやつです。

メカニズムはわからんのですが、これを長時間履いて足踏みしたりウロウロしていると、身体が緩んで、下駄を降りた後は不思議なことに身体がシャッキリと整います。
 
競輪選手は皆当然のように持っていて、当然のように検車場でコツコツ歩いています(笑)。
 
 
 
 
グッズの紹介になって話が逸れましたね…。

ウォーミングアップの話に戻ります。
 
このような健康グッズを駆使しストレッチ、マッサージで身体をほぐしたら、ランニングシューズに履き替えてアクティブストレッチやダッシュを数本こなします。
 
 
 



 
その後、三本ローラーに30分〜1時間程度乗って、身体があったまったな〜と判断したらウォーミングアップ終了!

お疲れ様でした。
(写真は奈良競輪場のローラー場、非開催時の撮影です)
 
 
 
この行程をレースを走る度、毎回やっています。
 
まあ、人によってはもっと短い選手もいらっしゃいます。
 
三本ローラーに20分乗って終了! という、タイパが最高の方もおられますよ。
 
 
逆に、「動いていないと不安だから」という理由で、4〜5時間ウォーミングアップに費やす方もおられますよ。
 
ま、その辺は自分の身体と心との相談です。
 
先程書いた「空白の1時間」で、身体が冷えない人は短くてもいいですし、逆であれば長くなります。
 
ウォーミングアップ自体は心拍数が上がれば成り立ちますけど、ほんと体質次第なんですよね。
 
体調もその日によって違いますから、長い現役生活の中で、自分に合ったウォーミングアップ方法を見つけてアップデートしていくのです…。
 
 
 
いかがでしたか?

競輪界って相当ゆるい雰囲気が漂っていますが、この辺の「レースへの備え」に関しては意外と真面目にプロスポーツ選手やってるんですよ(笑)。
 
 
 
さ、ウォーミングアップを終えて無事にレースを走り終えたところで、お茶会に戻るわよ♡
 
 
 
ワイはこのお茶会は「存在する」説を推していきたい…。
 
その辺は皆さんのご想像にお任せします…!
 
 
 
ってな訳で、また次回!

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1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。

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