モーニング競輪、つらすぎ
サラリーマンが通勤する時間から、終電まで。
朝から晩まで、どこかしらで誰かしらがレースを走っている。
ーこんなスポーツ、他にないだろ?ー
業界の宣伝文句を雑に要約するな!
JKA様、CM製作会社様ゴメンナサイ!
このキャッチコピーの通り、競輪選手はホント朝から晩までレースを走らないといけません。
8時半発走のモーニング競輪からはじまり、23時半発走のミッドナイト競輪まで…。
まあ、ひとりの人間が1日の全てを担うわけではないので、開催ごとに与えられた時間のレースを3日間走る訳ですが。
この中でも、タイトルの通りモーニング競輪があまりにもキツすぎるのです(個人的感想)。
世間の出勤時間、つまり8時半に発走するモーニング競輪。
今回はちょっと愚痴を聞いてってくださいよ〜!
さて、前回「ウォーミングアップ」についての記事を書きましたね。
競輪選手は、発走時間の約30分前に脚見せがあり、呼び出し時間や準備等の兼ね合いで、実質3時間程度前から動いています!というお話でした。
記事を読んでいただいた前提で書いているので、見てない方は先に見てね!
『ウォーミングアップのおはなし』
モーニング競輪では、第1レースが8時20分発走です。
さあ、前回の記事の内容を踏まえて、モーニング競輪第1レースを走る場合の動きを逆算してみましょう。
まず、8時20分のレースの脚見せは8時に行われます。
という事で、直前控え室への呼び出しがかかるのが7時50分くらい。
更に、着替えやレース準備の時間を考慮して、呼び出し時間よりも30分くらい早くアップを終えます。
前回書いた「空白の1時間」ですね。
それを踏まえると、遅くとも7時20分〜半にはウォーミングアップを終えている必要があります。
ぼくは、ストレッチと陸上アップに1時間弱、ローラーに1時間弱乗るので…。
あれっ?動き出しの時間、ヤバくね?
そうです。モーニング競輪の1レースを走る場合、競輪選手は5時半とかいう、日が昇っているかも怪しい早朝から動き出す必要があるのです…!
…と言いたいのですが、現実はその時間からウォーミングアップはできません。
実は、モーニング開催であっても、食堂のオープンは5時とか5時半なのです。
そりゃ、食堂スタッフの方はオープンより更に早い時間から出勤して、食事を準備してくださる訳ですから…。
4時台に開けろ!と言っても無理がありますよね(笑)。
とはいえ、選手の立場からすると、ウォーミングアップを始めたいのに朝ごはんが食べられない…!という残念すぎる事態になります。
しかも、ご飯を食べてすぐにウォーミングアップに移れるのか?と言うと結構厳しい。
いくら強靱な内臓を持つプロアスリートとは言え、食後すぐに動くのは気持ち的に辛いです。
朝食を抜いたり、自分で軽食を用意する…という手も無くはないですが、そりゃ食堂のご飯を食べるのがベストですわな。
朝食の問題は置いといても、モーニング競輪に参加した際には、どうしても時間をマネジメントするためにウォーミングアップを短縮する必要が出てくるんですよね。
僕の場合、1時間弱行っているストレッチと陸上アップをそれぞれ短縮します。
更に、ローラーも、1時間弱乗っているところを短縮…。
身体があったまったと判断でき次第アップ終了、としています。
ただ、このウォーミングアップにはとんでもない欠陥があるのです。お気づきでしょうか?
そう、身体があったまったと判断できない状態の仕上がりでも、レース時間が近づいてしまって時間切れになる可能性があるのです。
しかも、早起きによる低血圧状態でのアップ開始ですから…。
いつもだと、ローラーに数十分乗ったらまぁ身体が温まるのですが、少し足りないな…と不安な状態でレースを走った事はぶっちゃけ何度もあります。
更に更に…僕も含めて、競輪選手は骨折の後遺症の神経痛や、腰痛を持っている選手が多く、気温が低い早朝に無理に動き出すと、痛みが発動する可能性が高いんですよね(特に冬季は地獄です)。
前回記事でも書きましたが、身体が冷えた状態で強度の高い運動をすると、パフォーマンスは落ちるわ、ケガの元になるわ…と損しかありません。
風呂に入って物理的に身体を温めたり、色々と時短できないか…と工夫をするのですが、別の何かの時間を削らないといけない事に変わりはありません。
ミッドナイト競輪も相当にピーキーな時間設定のレースですが、レース開始が遅くなる分にはウォーミングアップ時間は確実に確保できます。
しかしモーニング競輪は…。
「夜型人間だからだろ」「朝に弱い奴が悪い」と思われても仕方ないのですが、こういう背景もあり、モーニング競輪は相当難儀な開催なのです。
実際、ぼくはモーニング競輪を走った後に腰痛、過去に骨折した部位の神経痛が出る事が超絶多いです。
やはり、ウォーミングアップが「足りない」んだと思いますよ。
「モーニングは苦手」とコメントを出している選手って結構多いですけど、こういう事情があるんですよ。
こういう時間のズレにも対応できてこそプロなんですけど、逆に言えば長期的にパフォーマンスを保つため身を守るのもプロの仕事です。
しかも僕たちは個人事業主ですから、仕事を選ぶ権利というのは一応持ち合わせている訳です。
そもそも、我々が受けるのはあくまで仕事の「斡旋」ですからね。
競輪の斡旋に個別の要求が通らないのは承知の上ですが、できれば、ウォーミングアップ時間が短くてもいい選手や、早朝が得意な方(高齢選手は朝に強い方が多いぞ!)を優先して斡旋してくれ…と思ってしまいます…。
いや、そんなん無理に決まってるんですけどね?
あくまでこの場は「ブログ」ですから、たまには競輪選手のリアルな愚痴も書かせてくださーい!
さて、愚痴を言ってるだけではコンテンツとして色々と残念なので、余談を少々…。
競輪開催では参加しているほぼ全選手がローラー練習を行います。
どこの競輪場も広大なローラー場がありますが、流石に参加する全選手(FIIの7R開催でも50人以上、記念だと108人)が同時に乗れるほどの台数はありません。
まあ、同時に全員がローラーに乗るシチュエーションなんてほぼ有り得ないのですが…。
ウォーミングアップの時間は人それぞれなので、他の選手とローラーに乗る時間が被ったりします。
って事で、こんな所でも位置取り合戦が発生するのです。
洗濯機だったり、ホント競輪選手は位置取りに忙しいなぁ…。
そんな壮絶な場所取りバトルの中で、特に1レースや2レースの選手が場所取りに乗り遅れて、先に後ろのレースの人がローラーに乗り始めてしまうと
「今からアップをしたいのに、もう場所がなくてウォーミングアップができない!」
という事態になりかねません。
ご安心ください。
競輪界、その手のトラブルシューティングに関しては、痒いところに手が届いていますよ。
実は、1レースと2レースの選手には「前日場所取り」の権利があるのです。
こんな札が、どこの競輪場にも置いてあります。
この札を、ローラー台の見えるところに置いておけば場所取り完了!
前日に札を置き忘れてしまったら、それは本人の責任だ!
うーん、競輪選手、どんな場面でも位置取りが厳しい〜い!
※写真は全て奈良競輪場。非開催時、許可を得て撮影
という訳で、今回は愚痴を並べる回となってしまいました。
まあ、「お仕事」だから皆色々あるよねぇ。
とはいえ、当然ながら与えられた仕事はプロとして一生懸命走る次第ですよ。
「苦手だから」という理由で結果が左右されるのはプロ失格。できる事を一生懸命やりますよ!
お金をかけられている以上、不安があったり、万全じゃないなら走るな!って話ですしね。
でも、我々もひとりの人間。
もしモーニングに呼ばれて驚く程に調子が悪そうな選手を見かけたら、そういう事情だと思ってくださいね(笑)。
では、また次回!
1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。