バリスタへの道〜入門編〜
バリスタ「今回はブレンドを変えてみました」
客「うーん、雑味が減ってコクが増した気がするね」
バリスタ「あっ、手違いで前回と同じものを出していました! すみません!」
客「・・・」
こんなやり取りが競輪場宿舎でも繰り広げられています。
何時からか、競輪界では団欒の時間にコーヒーを淹れる文化が定着してきました。
僕がデビューした頃は、コーヒー好きな人がドリップコーヒーを持ち込んで、食後に勝手に飲んでいる程度のものだった気がします。
ぶっちゃけ、マニアックと言うか…。
どことなくマイナーな趣味で、皆にコーヒーを振る舞ってくれる方が居たとしても、ちょっとこだわりの強そうな、エッジが効いた感じの方が多かった気がします(偏見)。
しかし、あるタイミングから急に
「後輩なんだから先輩にコーヒーくらい淹れろや」
的な圧が生まれはじめ、メジャーな文化へと昇華されたのです。
まぁ、体育会系の縦社会ですから、こういう後輩の仕事的な、他所ではハラスメントとなるかもしれない文化も、我々は甘んじて受け入れる所存です。
ただ、こういう業界の文化って、段階を踏みつつ発生して定着するもんだと思っていたのですけどね。
このコーヒー文化、ある時期を跨いだ瞬間から爆発的に定着したのです。
ある日突然、今までコーヒーを飲んでいる姿すら見た事ないような先輩が
「ドリップコーヒーくらい持って来とけよ」
と言い始めるんです。
なんとも釈然としない心を抑えつつ
「すみません…」
と謝って次回からコーヒーを買っていく後輩…。
なんて健気なんだ…。
ちなみにこの
ある時期を跨いだ瞬間、爆発的に定着したのです。
という一文の“ある時期”というのは、輪界のスター、脇本雄太先輩(福井 94期)がコーヒーにハマり、特別競輪で参加選手に自分で淹れたコーヒーを振る舞われはじめた時期だと思います。
特別競輪の際に放映される某番組で特集されたりもしていましたから、お客様もご存知ではないでしょうか?
もちろん、個人の影響力で定着した…という訳ではなく、アウトドアブームやコロナ禍のインドア思考がマッチした結果起こったブームだとは思います。
とはいえ、GI 戦線の方々にコーヒーを嗜んだり周りに振る舞う方が増えた結果、業界に広まったのはこの時期なんですよね。
やはり、上位選手に定着した文化は下位にも爆発的に広がるのです。
川の流れのようで趣がありますね(意味不明)。
競輪界には、元々 茶坊主 というお茶汲み文化がありました。
後輩がお茶っ葉を購入して競輪場入りし、先輩より早起きして目覚めにお茶を一杯。
毎食後にお茶で一服。
茶を淹れて振る舞うのが後輩の仕事!みたいな光景、漫画などの競輪を取り上げている作品にはテンプレとしてよく登場するのでご存知のお客様も少なくないかもしれません。
しかし、時代が進むにつれ緑茶を飲む人自体が減ってきたためか、お茶汲みは自然に淘汰されました(静岡では今でもあるとか無いとか…さすがお茶の国だぜ)。
今では、同県内で最年少参加選手の事を 茶坊主 と呼ぶなど、スラングとしてのみ存在しています。
※例:今開催、俺50歳なのに 茶坊主 だってよ!恐ろしいな競輪界!!
その茶坊主文化が、時を経てコーヒー坊主として復活したのかもしれませんね。
競輪選手という生き物は、非常にこだわりが強く、様々な趣味を持っています。
オールドスタイルの競輪選手の趣味と言えば、
車ァ!時計ッ!酒ェ!女ァ!
みたいな、非常に硬派な世界な訳ですが。
現代の競輪選手の趣味と言えば、
旅行♡アウトドア♡食べ歩き♡スイーツ♡
みたいなゆるい感じになっています。
そんな現代の草食系競輪選手にとって、暇な開催中に皆で茶菓子を持ち寄ってオシャレなコーヒーを嗜むというのはかなり相性のいい趣味なのかもしれません。
各々が個性豊かな道具を揃えて、こだわりの豆を持ち込み、自慢のミルで豆を挽き、我流の淹れ方を語り合う。
「今日はエチオピアのゲイシャ(豆の銘柄)を仕入れてみたわよ♡」
「やだぁ!高級品じゃない♡どこで買ったの?」
「地元の〇〇ってお店♡」
「えー!近ーーい!アタシも今度買っちゃおうかしら!」
「このミルで挽くわよ♡」
「やだーー♡かわいいー!♡木目調〜♡」
競輪界では日々こんな硬派な会話が繰り広げられている、そんな世界なのです。
ってな訳で(どんな訳なのか)。
ここからは、バリスタたむらのコーヒーグッズを紹介します。
そう、例に漏れず、ミーハーなぼくはコーヒーセットを揃えております。
いや、コーヒーに詳しい訳ではないです、それどころか、自宅ではまったくコーヒーを飲みません。
レースの時にだけ、いっちょ前のコーヒーセットを持ち込んでいるんですよ。
ってのもレースに参加した際、食後に後輩が
「コーヒー淹れましょうか」
と。ひとこと言えると、めっちゃ気を使える奴みたいな雰囲気が出るじゃないですか。
それです。それが欲しいのです。
という事で、特に代わり映えする訳でもない、オーソドックスなセットですが…良ければぼくのコーヒーセット、見てってください。
こんな感じ。
カリタの木製ミル
HARIOのV60
KALDIで買ったポット
スリーコインズで買ったジョウロ
いつもこの装備でバリスタ面しながら競輪選手にコーヒーを淹れているのですよ。
こだわり?
ないです。
ネットでいい感じのやつを雰囲気で選びました。
本日の豆はこちら
奈良競輪場近くのコーヒー屋さんMCGコーヒーさんのムンドノーボ サントス。
店主さんに
「美味しいとこください!」
と言うとコレが出てきます。
クセがないのにコクがあり、人を選ばないおいしいコーヒーです。
他の豆あんま知らんけど。
選手にも評判がいいので、いつもコレを購入していますよ。
家では全くコーヒー飲まないと言いましたが、競輪場内は撮影禁止ですし、せっかくセットを出したので自宅でブログ用に一杯淹れてみようかと思います。
ミルに豆を投入!
ハンドルを無心でぐるぐる回して豆を挽きます。
電動のミルもあるのですが、手動の方が趣があるじゃん?しらんけど。
なんかね、本抽出する前に一度湯を通してやるとガスが抜けて雑味が減るらしい…。
そして、湯を含んでふんわりと豆が膨らむ状態、“ドーム”ができるといいらしいですよ。
あんま詳しくないんですけどYouTubeでみました。
プクプクとガスが抜けていきます。
もう既にこんもりとドーム状に膨らんでいますね。
できました!ドーム。
これができると淹れ手の腕がいい…という訳ではなく、豆が新鮮な証だそうで。
理屈は知らんが、豆が悪いとこうはならないらしいです。
いつもレース前にコーヒー豆を購入して持ち込むので古い豆に触れた事がないのですが…。
古い豆だと空気を含まずぺっちゃんこになるのかな?
特に何かがある、という訳でもなく…上手にできました。
マグカップに注いでいただきまーす!
コーヒーはどれだけ自分に酔いながら飲めるかが勝負だそうです。
んー、遠い目をしながらコーヒー飲んでる自分に乾杯(猫舌なので熱くて飲めてない)。
うーむ、豆も新鮮で雑味が少なく、コクが深い。
上手に抽出できたかな。
ここで突然バリスタが登場して
「こちらはドリップコーヒーですが…」
と言われても、ぼくは黙って受け入れるでしょう。
それくらい“違いのわかる男”とは程遠いですが、マズイ!と言われる仕上がりのコーヒーでない確信はあります(笑)。
まあ、これからも先輩に媚びを売る後輩ツールとして、上手にコーヒーと付き合っていきたいものです。
コーヒーガチ勢の方がおられたら、なんかすみません(笑)。
どうせやるなら、もう少し勉強してみようかな…なんて思う今日この頃ではあります。
誰か詳しい方がおられたら、Twitter(現X)で教えてくださ〜い!
ってな訳で、競輪界のコーヒー事情のお話と、ぼくのコーヒー道具自慢でした。
ではまた次回!
1995年3月30日生まれ。滋賀県出身。 日本競輪選手会 奈良支部所属107期の競輪選手。現在はA級2班。同期には新山響平、山岸佳太、簗田一輝など。 ……以上はすべて仮初めの姿であり、本業は某アイドルのプロデューサーであるともっぱらの噂。 ドール、カメラ、声優など、さまざまな「沼」に足を踏み入れている。