推しは強気にアタマで狙え! 中川貴徳
illustrated by Ayu
『的中街道まっしぐら』をはじめとして、自分の買い目を出す番組に出演する機会が増えた。
出すだけではない。すべてのレースを購入し、買い目と金額をオープンにしてその収支を発表する。
勝ち負けも勿論だが、どうしてこの予想に至ったのか…選手の調子を見極め、特徴を把握し、そのレースでの展開を推理するのが大切で、自分の競輪IQと知識、説得力と勝負強さも問われる。
車券センスがお世辞にもいいとは言えないわたしにとっては毎回が勉強と修行の日々である。
そんな中で車券の相性のいい選手が出てくると思わずニッコリしてしまう…。
中川貴徳選手はそのひとりだ。
決して展開はよくないのに直線突っ込んで高配当を演出したり、チャンスがあればしっかりとモノにしたりもする。
派手さはないけれど、わたしにとって信頼度の高い選手だ。
小田原でその調子の良さに注目していた時に鋭い伸びを見せ、高配当をプレゼントしてくれたこともある。
わたしが
「今のレースで白ゴハン3杯はイケる!」
と言ったのをライダーが伝えると、
「帰ってからアーカイブ見ます!」
と、とても嬉しそうにしてくれていたそうな。
突っ込む選手ゆえに落車も多く、調子が上がってくると落車の繰り返し。
だが、宇都宮ミッドナイトにゲスト出演した彼にその話を振ると、悲壮感はまるでなくとてもサバサバとした感じだった。
その現実をただ受け入れて、自分のやれる事をやります、とでも言うような芯の強さを見た思いがした。
その時に
「次の向日町記念、わたしも配信に出るからおさいふパンパンにさせてね!」
と言うと、
「わかりました!頑張ります!」
と、とびっきりの笑顔で答えてくれた。
それなのに…。
一次予選では磯川選手の捲りをとらえて1着だったのに、わたしは彼を2着でしか買っていなかった。
「江藤さん、やりました!」と意気揚々とインタビューに来た彼。
しかし、1着で買っていなかったことに加え、ゴール前「差さないでー」と叫んだことを有坂さんに暴露され、ただただお詫びするしかなかったのである。
そして最終日にもう一度訪れた中川チャンス。中川くんは志田龍星くんの番手だった。
林さんの
「初日に調子が上がってきたと言ってたし、これはもう我々の中川くんでいくしかないですよね!」
という提案もあり、再び狙うことに。
6番車の中川くんは全く売れておらず、中川くんと志田くんの折り返しから全、両者のハサミ全まで買って大勝負に出た。
わこちゃんとレースを見に行き、周りのファンにもビックリされるほどの大声援を送った。
その声が届いたかのように彼は志田くんのカマシを見事にとらえてくれたのだ。
ゴール後にわこちゃんと抱き合って大喜び!
スキップしてスタジオに帰ったのだが、
「志田選手、4着でしたよ…」
大津くんの悪魔の報告で膝から崩れ落ちた。
しかも配当は9万円を超えていた。
当たっていたらその時の負けは全部ひっくり返っていたのに…。
ちなみに林さんはあまりのショックに椅子からひっくり返っていた(笑)。
いつも買うメロンチャンスの6全全を買えなかった自分の弱さに落ち込み、またも心の中で中川くんに詫びたのは言うまでもない。
優勝したと勘違いしてガッツポーズをした選手の気持ちが痛いほどわかった気がした…。
今回はラブレターというより懺悔レターになってしまったが「推しは強気に狙え!」という事を中川くんに教えられ、今度こそは中川チャンスでのリベンジを心に誓ったわたしであった。
中川くん、また高配当期待してます♡
スピードチャンネル初代キャスターとして競輪デビュー。以来、競輪の魅力にどっぷりハマりウン十年…。全国各地の競輪場でキャスターとして活躍を続けている。 滑舌の良さとベテラン解説者にも全く物怖じしない鋭いツッコミが武器。「トリガミパトローラー」「メロンチャンス」など、独自のキャラクターで番組を盛り上げる。