影と光を併せ持つ 松浦悠士|DMM競輪

影と光を併せ持つ 松浦悠士

illustrated by Ayu




「みきさんの好きな選手は?」

とよく聞かれる。



この質問が意外と難しい…。

車券を買っている時は予想しやすい選手だし(当たる当たらないとはまた別で)、インタビューをしてる時は笑顔でしっかり答えてくれる選手だし、取材をしている時は話しかけやすくてネタを提供してくれる選手。

…そう!

ただの自分勝手じゃん! と怒られるのを覚悟で言うが、女子はいくつになっても求めるものが多く、ワガママなのだ(あくまでも個人の見解です)。

その自分勝手なわたしが考える「どの場面でも完璧な選手」。

それが松浦選手なのだ。



レースは必ずファンの期待に応える立ち回りをしてくれる=車券が予想しやすい。

インタビューはいつも明確な受け答えをしてくれる。

私がテンパって変な質問をしても、松浦選手はこちらの意図をきちんと理解して答えてくれるので、それがまったく悪目立ちしないのだ。ありがたやー。

取材をすれば、難しい自転車やチェーンなどの調整のこともわかりやすく教えてくれる。
そして次の日、それを結果に出しちゃうところもすごい!



だから最近は「好きな選手は?」って聞かれたら、

「松浦選手です」

って答える頻度がかなり高い。

そしたら「僕もー!わたしもー!」の声の多いこと多いこと。



そんな松浦選手が今年に入ってから苦しんでいるように見える。

松浦選手らしく自力の時も番手の時もちゃんと自分のやるべきことをやっているが、いちばん強い時の松浦選手のキレとスピード感、迫力がすこーし足りない気がする…。



でもね、シーズンオフのない競輪選手が一年中カンペキなレースをして、ずっと上位をキープするって本当に大変だと思う。

逆にそれができるからこそのS級S班なんだけど、その苦労と疲労は並じゃないと思う(韻を踏んでみた)。



いつも完璧な松浦選手だからなおさらそれを期待するファンが多いのもわかる。

もちろんわたしもそのひとりだ。

なによりもその期待に応えられていない現状に、いちばん歯痒い想いをしているのは松浦選手自身だろう。

だけどこの際、この機会だから松浦選手にはとことん苦しんでもらいましょう。

なぜなら今の苦しみに打ち勝って大輪の花を再び咲かせる力があると思っているから。



「松浦選手がこんなに強くなるなんて…」という声をよく耳にする。

器用に立ち回れる反面、落車や失格も多かった松浦選手は、そこにさらなる判断力と機動力に磨きをかけて、ここまでの地位にのしあがってきた。

「もう充分な苦労をしてきたんだよ」と言われる方も多いだろうが、ここは敢えて言わせてほしい。

最近、人間の色気と深みというのはその人の影の部分なんじゃないかと感じている。

影を経験した人間が光を浴びるからこそ、人はその眩さに魅了され、その人を支持したくなるのだ。

今の影、また近いうちにきっと訪れるだろう光を経験し、より色気を増した松浦選手を早く見てみたい。

と、色気という言葉とはほど遠い熟年キャスターが待ち望んでいる。

スピードチャンネル初代キャスターとして競輪デビュー。以来、競輪の魅力にどっぷりハマりウン十年…。全国各地の競輪場でキャスターとして活躍を続けている。 滑舌の良さとベテラン解説者にも全く物怖じしない鋭いツッコミが武器。「トリガミパトローラー」「メロンチャンス」など、独自のキャラクターで番組を盛り上げる。

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