ギャップ萌え理論 伊藤颯馬
illustrated by Ayu
伊藤颯馬…
なんて素敵な名前なんだろう。
ソウマという響きもいいし、漢字もいい。
親御さんのセンスを感じる。
そこで颯という字を調べたら「さっと風が吹くさま」「またはその風の音」という意味があるそうだ。
シュッとして、スマートで颯爽としていて…
そんなイメージを持つ方が多いのではないだろうか?
残念ながらこれを書いている時点で彼に直接お会いできていない。
昨年の武雄記念の1着インタビューで、画面越しにお話ししたことがあるだけだ。
その時の彼は日焼けした顔に笑顔を溢れさせ、逃げ切って勝利した喜びを素直に語ってくれた。
「あと30分くらいお話聞きたいんですが、残念ながらクールダウンがありますもんね」
と言って送りだしたが、病欠が出て次のレースが中止になったということを除いても思わず出てきた私の本音だった。
スマートというよりは、昔クラスにいた運動が得意で明るくやんちゃな人気者の男子というイメージだった。
名前とのギャップでまた余計に彼を好きになってしまった。
それからの彼のレースを見ていると、これまたスマートで颯爽としているというよりは、がむしゃらに脚を使って戦っている。
前を回ったらカマシも飛びつきもあり、番手を回れる器用さも持ち合わせている。
ウィナーズカップでの最終日の郡司選手の後ろに飛びつき、最後追い込んだレース。
そして競輪祭での初日、あの脇本雄太選手を苦しめ、なおかつ先着するというレース。
いずれも私は心の中で思わず「頑張れー!」と言っていた。
決して車券を買っていたからではない。
格上相手に必死で戦う彼のレースぶりにとても興奮したのだ。
「ギャップ萌え」という言葉がある。
私が人を好きになる時はほとんどこれだ。
第一印象と違う面を知った時に男女問わずその人に惹かれてしまう。
伊藤颯馬選手にはとことんこれを期待したい。
爽やかな風じゃなくてもいいじゃない。
颯爽としてなくてもいいじゃない。
対戦相手に嫌がられるような重くて強い風を吹かせてほしい。
これからもファンの期待をいい意味で裏切るようなレースを見せてほしい。
そしてまたあのやんちゃでかわいい笑顔を大舞台で見せてほしい。
その時はインタビューを直接見たい。話を聞きたい。
息子ほど歳の離れた選手の活躍は、ベテランキャスターをまた元気にしてしまうのでした。
ギャップ萌え理論、みなさんはどうですか?(笑)
スピードチャンネル初代キャスターとして競輪デビュー。以来、競輪の魅力にどっぷりハマりウン十年…。全国各地の競輪場でキャスターとして活躍を続けている。 滑舌の良さとベテラン解説者にも全く物怖じしない鋭いツッコミが武器。「トリガミパトローラー」「メロンチャンス」など、独自のキャラクターで番組を盛り上げる。