俺流の極意 荒井崇博
illustrated by Ayu
最近、とても気になっている選手がいる。
何を隠そう、荒井祟博選手だ。
気になっているというのは少し違う、気になって仕方がないと言った方が正しいと思う。
実は若い時、荒井選手がとても苦手だった。
荒井選手が無類の強さで小田原記念を完全優勝した時、私は優勝インタビューでその洗礼を受けた。
強さを褒め称える私を軽くいなすような態度。
あの強さで優勝したのだからもっと喜んでファンの前で笑顔のひとつでも見せたらいい…そんな悪態を心の中に持っていた。
それが始まりだったと思う。
それから長い時を経て、武雄などで荒井選手と話す機会も増えた。
そして気づいたことがある。
ともすると誤解されそうなぶっきらぼうで厳しい言葉の中にある優しさ、ユニークさ、そして男らしさ。
彼はいい時もそうでない時もずっと同じだった。
人によく思われなくてもいい(と私が勝手に感じているだけだが)と考え、俺流を貫ける数少ない人間のひとりなのではないかと。
そしてその源となっているのがこれまで築いてきた自分の力であり、人知れずしてきた努力なのではないかと…
私はその昔、人の目ばかり気にしていた。
人の評価に一喜一憂し、人とのバランスをどう取るかばかり考えていた。
アンチ上等。見たくないやつは見るな。
こんな考えができるようになったのはつい最近のことだ。
誰にでも好まれるお飾りのようなキレイな司会より、アンチがいてもファンと同じ目線で考え、それを解説に聞ける司会がしたいと思ったからだ。
そんな図々しい考えが持てるようになったのは、無駄に重ねてきた年齢とキャリアとほんの少しばかりの自信だと思う。
そんなわたしが今の荒井選手の一挙手一投足に釘付けになるのも必然と言える。
今やインタビューでの荒井節が聞きたいし、荒井節が弱いと肩すかしを食ったような気分になるほどだから立派な荒井ファンであり、荒井中毒といえるだろう(笑)。
人に好かれることは簡単だ。嫌われる方がよっぽど苦しくて難しいことだと思う。
そしてそれができるのは自分の信念を強く持ち、自信に満ち溢れているほんの一握りの人間だと思う。
そしてそれがその人の個性なんだと周りが認めていくのだ。
それを長年ブレずにやっている荒井選手のこれからを影ながら応援していきたいし、誰もがピリッとする荒井節を今後もわたしのようなひねくれ者のファンに届けてほしいと、影ながら(決しておおっぴらにではない・笑)期待していきたいと思う。
実はこのコラムを執筆したのは今年のダービー3日目のこと。
そのダービーで決勝まで進み、賞金ランキングの上位に名を連ねている荒井選手の大活躍には、びっくりするとともに嬉しい思いでいっぱいだ。
聞けば諫早干拓グループでの猛練習はもちろん、生活習慣の改善、食事管理などたくさんの努力をしたらしい。
今やその干拓グループには他県から参加しにくる選手もいるとか。
500勝を達成し、長崎に移籍を発表した荒井選手の今後のさらなる活躍を期待したい。
スピードチャンネル初代キャスターとして競輪デビュー。以来、競輪の魅力にどっぷりハマりウン十年…。全国各地の競輪場でキャスターとして活躍を続けている。 滑舌の良さとベテラン解説者にも全く物怖じしない鋭いツッコミが武器。「トリガミパトローラー」「メロンチャンス」など、独自のキャラクターで番組を盛り上げる。