強さと脆さの同居 中川誠一郎
illustrated by Ayu
選手のコラムが充実している。
直近に戦ったレースの振り返り、趣味やプライベートのこと、次のレースへの意気込み…選手を身近に感じられ、素顔を垣間見ることができる。時間を忘れ、ついつい読み耽ってしまう。
そんな中でもお気に入りは中川誠一郎選手のコラム(※編注:netkeirin『ほろ酔い放談』)だ。
大好きなお酒を飲みながら、愛のある(と一方的に思っている)エトミキいじりはさることながら、仲良し選手との深イイ交遊録も誠ちゃんの手にかかると、おもしろネタになってしまう。
そしてアンチからの質問にも笑顔で答え、相当な自虐もぶち込んでいくという荒技で新境地を開拓している。
あのコラムのおかげでファンの間ではエトミキ還暦説まで流れているらしい(笑)。
これって競輪界広しと、誠ちゃんしかできない技じゃない?
すごーい! ずるーい!
そんな称賛と羨望の目が誠ちゃんに向けられているのではないだろうか。
誠ちゃんの人柄は大好きだ。
でも車券は別なんだよなー。
という声をよく耳にする。
そりゃそうだよね。ものすごく強かった次の日にコロッと負けちゃったりもするからね。
ホント性格同様、車券も掴みどころがないのだ。
だけど、インタビューでの誠ちゃんの笑顔を見ると、車券がハズれていても
「チクショー!」
という気持ちはどこへやら。
「ま、誠ちゃんだからしょーがないか。明日も頑張って♡」
となってしまう。
これに何度ヤラれていることか…。
「もう誠ちゃんのレースは買わない!」
と誓っても誓っても、強い強い誠ちゃんとあの笑顔見たさに買ってしまうのだ。
そしてまた裏切られる。
また笑顔に癒される。
また買ってしまう…。
キリがないのでこのあたりでやめておくが、無限ループとはまさにこのことだ。
これを「中川誠一郎ツンデレ沼」とわたしは勝手に呼んでいる。
強さと脆さの同居…誠ちゃんの魅力はここに尽きると思う。
競輪初心者に「中川選手ってどういう選手なの?」と聞かれたら
「すごーく強いよ!でもね、ビックリするくらい簡単に負ける時もあるから買い時が難しいんだよね。性格はとても気さくでお酒が大好きだから一緒に飲んでみたい!」
と即答できる。
これはあくまでもわたしのイメージだが、ファンの誰もが誠ちゃんといえばこう、というのが明確に浮かぶと思う。
それだけのインパクトがある強さも、何もできなかった時の脆さもファンに受け入れられ、愛されている。
アンチも多いのがその何よりの証拠だ。
「好き」の反対は「嫌い」ではない。
「好き」の反対は「気にならない」なのだ。
嫌われているうちが華。
誰にも気にされなくなったら…人として、選手として、こんなに悲しいことはないだろう。
彼はもはや、いち競輪選手という枠を超えて「中川誠一郎」というキャラを確立したと思う。
そんなみんな大好き誠ちゃんといつか、大好きな日本酒を飲みながら対談したいものだ(ほとんど使えない内容になるのは重々承知で・笑)。
まずは早くケガを治して帰ってきてね!
スピードチャンネル初代キャスターとして競輪デビュー。以来、競輪の魅力にどっぷりハマりウン十年…。全国各地の競輪場でキャスターとして活躍を続けている。 滑舌の良さとベテラン解説者にも全く物怖じしない鋭いツッコミが武器。「トリガミパトローラー」「メロンチャンス」など、独自のキャラクターで番組を盛り上げる。