赤旗審議|DMM競輪

赤旗審議

キリリ! くみにいです。




各競輪場には1人ずつ「開催指導員」という、選手と管理そして施行の間に立ち、円滑な運営のために尽力する選手がいます。
2016年から4年間、高松競輪場でその重要な役目を務めさせてもらいました。


「開催指導員」は言わば中間管理職のような、板挟みな立場です。
私が若かりし頃の開催指導員さんは年配の先輩で、気難しく厳しそうというイメージでした。


バーーン!(指導員室の扉を勢いよく開ける音)
    
選手: なんで今のレース俺が失格や! おかしいやろ! 審判長出せ!

指導員:はぁ!? お前しか横に動いてないが! 何言うとんじゃ!
 
選手:お前に聞いてないわ! ビデオ見せろ!

指導員: ガチャガチャ…ウィーン(ビデオを巻き戻す音)
 
 
みたいな感じで、レースを走り終えて興奮した選手が、レーサーシューズを履いたまま勢いよく飛び込んでくる修羅場のような場所でした。
 
上記のように言い返す指導員もいれば、「まぁまぁ」と宥める人、ただただ言われるがまま選手に罵倒される人…。
 
人それぞれでしたが、私が好きだった指導員さんは、自分が興奮して暴言を吐く前に「先に審判に確認をしてくれていた」指導員さんです。

審判に対して「なぜ今の動きが赤旗か? 失格の判定はおかしい」と、私に代わって抗議してくれていました。

一度失格の判定が下ると判定は覆りませんが、私の気持ちを代弁してくれて私の立場でものを言ってくれるのが、心強いしやり場のない怒りを鎮めてくれました。



私が選手目線ではわからなかった、指導員になって初めて感じたことが2つあります。

1つは赤旗審議に関することです。

もちろん選手は決められたルールの中で走り、またそのルールに守られているとも言えます。
ルールを破れば当然赤旗が上がります。しかし赤旗を上げた審判に対して選手はよくこう言います。
 
「じゃお前たちが走ってみろ! お前たちは素人やろ!」

選手の側からすると失格かセーフかの瀬戸際。
審議の判定放送を聞いても、選手は納得いかない時がよくあります。

そのため、選手が考えている距離感や動きの認識の違いを審判の方とたびたび話をして、その差が生まれないように話し合ってきました。


指導員となって気付かされたのは、審判は「選手側の失格かセーフかだけを判定しているのではない」ということでした。

お金を出して車券を買っていただいているお客さんにはもちろん、ルールを知らない人や、傾斜のあるバンクで特殊な自転車に乗って走ったことがない人にもわかるように、納得してもらえる説明ができるように審議しています。



2つ目は、競輪は興行であり売上を上げる必要があるということです。

ほとんど審議になることはありませんが、スタートの内抜きに対しても審判はスルーしているわけではありません。
 
瞬間再生装置というもので、レースの途中で何度も確認しています。

赤旗を上げ決定を遅らせると、次のレースの発売時間が削られます。そこでレース中から何人もの審判員が録画を確認して、必要がある場合のみ赤旗を上げているのです。

車券の結果を左右するため、公正安全に運営できるように、すべての関係者が責任をもって仕事をしています。



私が指導員に任命されて心掛けたことは

・選手と喧嘩をしない 
・選手、管理、施行の間に立つが、8:2で選手側に立つ
・冷静に言葉を選ぶ
・好き嫌いは持たず、すべての選手を家族のように思う

人それぞれではあるとは思いますが、私はこのように心掛けました。

そのおかげか周りの人たちの助けや、選手の協力もあり有意義で自分が成長できる4年間となりました。
 



チータカ工作キット。
ガールズの選手が飾って下さい! と机の上に。背中にも何人かのサイン入り。


【今回の締めの格言】
「ハンドルと嫁は突け」


カチャカチャ…カチャカチャ……。
なかなかセッチングが出ない自分に対して先行職人の先輩が教えてくれた。
 
「嫁とハンドルは突け」と。

(※編注:ハンドルを奥側に押して角度を上げることを「突く(または送る)」という。対して、手前に引いて下げることを「しゃくる」という)

現役競輪選手。香川支部香川道場所属71期。現在はA級3班。自転車を、そして競輪を心から愛するナイスガイ。その競輪愛はもはや「ファン」と呼んでも差し支えないほど深く、同業者である他の選手からサインをもらうほど。愛称は「くみにい」。

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